<社説>ベルギーのテロ 武器弾薬と資金の遮断を


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 また起きた惨事にやるせなさが募る。ベルギーの首都ブリュッセルの国際空港と地下鉄駅で同時テロがあり、約30人が死亡した。「イスラム国」(IS)を名乗る組織が犯行声明を出し、「(ISを攻撃する)『十字軍連合』に暗黒の日々をもたらす」と警告した。

 やむことのない「憎悪による暴力」に暗然とする。各国がベルギーへの連帯を表明したのは当然だ。国際社会が結束してテロ根絶を図りたい。
 現場にいた容疑者1人が逃走中だが、自爆した2人とこの容疑者だけの犯行であるはずがない。組織の全容解明が必要だ。
 関与者を拘束するのはよいが、過剰な掃討作戦は危険である。殺さずに済む者を殺したり、巻き添え死を招いたりしては、さらなる報復の連鎖を招きかねないからだ。中東に住む、あるいは中東系移民の人命を軽視するかのような印象は、決して与えてはならない。
 必要なのは理性的かつ根本的に対処することである。爆発物の材料を調達するにも製造して運ぶにも、要員を養うにも、いずれにせよテロには資金が要る。だからテロ根絶には関与者の拘束とともに、資金の遮断が効果的である。各国が緊密な包囲網を築いて資金を遮断するのは可能なはずだ。
 昨年のパリ同時多発テロに続くISによるテロで、中東からの難民・移民排斥の機運が高まらないかも懸念される。排外主義は人類が長い時間をかけてようやく脱しつつある悪弊だ。歴史を逆戻りするような愚を犯してはならない。
 「テロリストはコーランを読んだこともないやつだ。そんな連中と一緒にされないか心配だ」。ベルギーに住む中東移民2世の言葉が胸を突く。イスラム教の聖典コーランは「罪なき一人を殺すのは人類全体を殺すこと」と説いている。本来は平和的な宗教であることを銘記しておきたい。
 5月には主要国首脳会議(サミット)が開かれる。テロ対策が議題となろう。テロ根絶には武器弾薬の国際的売買を禁ずるのが最も有効ではないか。
 中東で現在進行形の悲劇が、元をたどれば欧米に原因があると思われている以上、テロ志願者は続くに違いない。本質的な解決策は憎悪の連鎖を断つ真の和解だ。歴史を踏まえた中東と欧米との本格的な和解協議を目に見える形で始めるべきだ。サミットは、それを論議する大きな契機としたい。