<社説>同一労働同一賃金 実効性、透明性ある制度を


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 同じ職務内容であるならば賃金も同一という基本原則に立つべきだ。実現に向け、実効性と透明性のある制度を求めたい。

 政府は、正社員と非正規労働者の賃金格差を是正する「同一労働同一賃金」の実現に向けた具体策の検討に入った。欧州の事例や国内外の判例を研究し、5月にまとめる「1億総活躍プラン」で政策の方向性を示す。
 契約社員やパートなど非正規労働者は雇用者全体の約4割を占めている。正社員との賃金格差を放置することは許されない。
 子育てなど家庭生活上の制約でパート労働に就く女性や、定年後も就労を希望する高齢者が厳しい待遇に苦しむような現状は改めるべきだ。本県のような「子どもの貧困」問題を解消するためにも、非正規の待遇改善は不可欠だ。
 厚生労働省が所管する労働政策研究・研修機構によると、フルタイムで働く労働者に対するパート労働者の時間当たりの賃金水準はフランスの89・1%、ドイツの79・3%に対し、日本は56・8%と大きな差がある。欧州と比較して日本の非正規労働者が厳しい待遇を強いられていることは明らかだ。
 欧州においては「パートタイム労働・有期労働契約法」(ドイツ)、「パートタイム労働指令」(EU)などの法整備で格差是正が図られた。客観的な理由がない限り、非正規労働者に不利益を与えてはならないという原則を確立した。
 日本では1993年に正社員との差別的な扱いを禁じた「パートタイム労働法」が成立したものの格差是正には至っていない。昨年、議員立法で「同一労働同一賃金推進法」が成立したが、審議過程で格差是正策が後退した経緯がある。
 必要なのは「同一賃金」を実現するため、実効性のある法整備を急ぐことだ。勤続年数や練度などを考慮した格差が例外的に生ずる場合でも、合理的な説明ができる賃金体系を築く必要がある。
 具体策を議論する政府の有識者検討会は、どのような場合に正社員と非正規労働者の賃金格差が不合理なのかを示す指針を策定する方針だ。透明性と公平性の確保に努めてほしい。
 多様で柔軟な働き方を国民が自由に選択できる前提として、正規と非正規の賃金格差は是正されるべきだ。その実現に向け、政財界を挙げた活発な論議を期待したい。単なる選挙向けのアピールに終わらせてはならない。