<社説>5年以内運用停止 厚顔極まる責任転嫁やめよ


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 交渉のさなかに、独善的に前提を変えて都合のいい解釈を繰り出し、約束不履行の責任を相手方へ一方的に押し付ける。

 ああ言えば、こう言う。あるいは「二枚舌」そのものか。およそ一般社会では通用しないだろう。安倍政権の身勝手さが際立つ。
 米軍普天間飛行場の5年以内の運用停止をめぐり、翁長雄志知事と会談した中谷元・防衛相は「辺野古移設への理解と協力が大前提だ」と述べた。その上で、県が名護市辺野古への移設に協力しなければ、具体策の検討さえしない姿勢を示した。恫喝(どうかつ)に等しい言動である。
 そもそも5年以内の運用停止は、仲井真弘多前知事の求めに応じ、安倍晋三首相が「できることは全部やる」と明言したことに始まる。仲井真氏が辺野古埋め立てを承認する直前のことである。
 その後、政府は「2014年2月から5年をめどに取り組む」とも言及し、19年2月までに実現したいと大見えを切っていた。
 辺野古移設とは切り離し、国と県が危険な普天間飛行場の閉鎖が急務であるとの認識で一致していたことこそが「大前提」だったのだ。
 仲井真氏も県議会で再三、「移設と運用停止は切り離すべきだ」と答弁していたことがその証左だ。
 県知事選で圧勝した翁長知事の揺るがぬ「新基地ノー」の主張に手を焼いた菅義偉官房長官らの言い回しは、昨年夏から「地元の協力が必要」へと変わった。
 さらに、米側が運用停止にまともに取り合わず、外交努力のかけらさえ尽くしていないにもかかわらず、中谷氏は「県の協力が大前提」と言い募る。厚顔極まる責任転嫁というしかあるまい。
 政権自ら「世界一危険」と位置付ける普天間飛行場の固定化をにじませ、5年以内運用停止を人質に辺野古移設容認を迫る構図だ。代執行訴訟の和解条項が定めた誠実な協議に背を向けた、威圧的かつ無責任な姿勢は許し難い。
 県は5年以内に運用を停止する工程表を日米で作成するよう求め、反転攻勢に出ている。新基地を拒む沖縄の民意を背に受けた当然の要求であり、一歩も引かずに押し通してほしい。
 5年以内運用停止は、仲井真氏から埋め立て承認を引き出すための方便ではなかったか。その疑念は拭えない。安倍首相や菅長官はまず正直に告白してはどうか。