<社説>秘密法審査会報告 政府の追認機関許されぬ


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 国会の監視が十分に機能しない以上、政府による法の恣意(しい)的運用を防ぐことはできない。国民の権利を損ねる重大欠陥のある法制度は廃止を含め議論し直すべきだ。

 特定秘密保護法に基づく政府の秘密指定を監視する衆参両院の情報監視審査会が初の年次報告書を議決し、両院議長に提出した。
 今回、両院は秘密指定が適切だったかどうかの判断を見送った。政府の運用に対する勧告権も行使せず、「意見」にとどめた。
 審査会は政府の法運用によって国民の知る権利が侵害されることがないよう監視するために設けられたはずだ。秘密指定の適否を判断しないのでは、何のための審査会か存在意義が問われよう。
 最大の問題は、審査会の適否判断に必要な情報が政府から提供されていない点にある。
 特定秘密の内容を列記した「特定秘密指定管理簿」を政府が提出したものの、記述が抽象的で、審査会は秘密指定の適否を審査できなかったという。信じ難い話だ。
 このような政府の態度は「何が秘密なのかは秘密だ」というものであり、国会による審査は不可能だ。政府による法の恣意的運用は無制限に拡大する恐れがある。
 「秘匿性の高さ」や「外国政府との信頼関係」を理由に、情報提供を拒むような政府の態度を許してはならない。衆院報告書は「立法府に対する説明責任の履行について、一層の改善を強く求める」として、「特定秘密指定管理簿」の改善を求めたが、これでは不十分だ。勧告権を行使し、政府に厳しく迫るべきだ。国民の権利を制限する法律の運用で、国会が政府の追認機関にとどまってはならない。
 そもそも特定秘密保護法は、審議過程で秘密指定の適否を監視するチェック機能の弱さが指摘されてきた。政府内に内閣保全監視委員会、独立公文書管理監を設置したが、「身内の機関」が適切な審査ができるのか疑問視されている。
 報告書をまとめた両院の情報監視審査会も、限られた人数と開催日数で監視機能を十分に発揮できたとは言えない。与党が過半以上を占める構成も政府監視の点では課題を残した。
 現状のままでは政府の運用に歯止めが利かず、国民の知る権利を守ることは難しい。監視機能の徹底を図るべきだ。それができなければ、特定秘密保護法が存続することは許されない。