<社説>保育園新設難航 地域活性化施設と考えよう


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 地域の理解と協力の中で子育てを支える環境を整えたい。保育園も住民ぐるみの対話を重ねる中で整備を進めるべきだ。

 地域住民の反対で認可保育園の新設を断念する事例が全国で問題となっている。園児の声による住環境への影響や送迎車両による交通渋滞が主な原因だ。県内でも宜野湾市と北谷町で設置場所の変更や開園の延期があった。
 待機児童問題を解消するためには保育園の定員を増やすか、新設することが求められる。それには園の運営主体や行政、地域住民の対話を通じて信頼関係を築くことが前提となる。
 静かな住環境を守りたいという住民の意向を無視したまま、保育園の整備を進めることはできない。送迎車両の増加で安全面を心配する住民もいるだろう。そのような不満や懸念と向き合い、丁寧に説明しながら課題を解決することが保育園の整備には求められる。
 園児の声を「騒音」と受け止める地域住民と保育園とのトラブルを抑えるため、政府は防音壁設置の補助費9億円を2015年度補正予算に計上した。
 しかし、高さ数メートルの防音壁で園児を外界と遮断することが、保育園と地域住民の良好な関係を築く上で得策だとは考えにくい。騒音の発生源となる「迷惑施設」として保育園を扱うような対応策では、地域住民との摩擦を根本的に解消することにはならない。
 大切にしたいのは地域で子育てを支えるという視点である。保育園と隣接して暮らす住民だけの問題ではなく、地域全体の問題として保育園整備に向き合うべきだ。
 園の新設に当たっては早期の住民説明会を開くことが肝要だ。その上で自治体単位の議論で住環境への影響など予期される課題に対処したい。安全面を考慮した送迎ルートの設定も必要であろう。
 交通渋滞が課題となった宜野湾市では地元自治会と保育園、行政が協力して新たな建設地を探した。園と地域住民の対話によって解決策を模索した事例と考えたい。
 住民との共生を図るため、保育園も地域活動の中に積極的に参加してほしい。地域活性化を促すための保育園の役割があるはずだ。何よりも子どもたちの元気な声は地域の活力源である。
 迷惑施設ではなく地域活性化の拠点と位置付け、望ましい保育園整備の在り方を考えたい。