<社説>九州地震拡大 新たな被害防ごう 避難者にきめ細かい支援を


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 熊本県で16日未明から震度6強の地震が短時間に連続して発生した。午前1時25分にはマグニチュード(M)7・3という阪神大震災と同じ規模の地震が起きている。16日の地震のエネルギーは14日に比べて16倍大きいもので、気象庁は14日が「前震」で、16日を「本震」だったと発表した。

 気象庁が2013年に長周期地震動の観測情報提供を始めて以来、国内で初めて最も強い「立っていることができない」ことを示す「階級4」を観測した。14日夜の「熊本地震」で始まった一連の地震は、新たな段階に入った。

被害大きい活断層地震

 大分県も含めた広範囲で地震が相次ぎ、各地で土砂崩れや建物倒壊などの被害も拡大した。死者も40人を超え、千人以上が重軽傷を負った。内陸部で起きる活断層地震の恐怖を目の当たりにした。
 今回の地震は震源の浅い内陸直下型で、真上では揺れが非常に強くなる。内陸で起きるため、基本的に津波は発生しないが、規模が小さくても局地的に激しい揺れが起きて被害が拡大する恐れがある。油断は禁物だ。
 活断層地震は震源が浅い場合、岩盤が不安定な状態になることで余震が多くなる傾向がある。一連の地震で建物や地盤が損害を受けていたため、さらなる地震で被害が拡大した可能性がある。今後の余震にも注意が必要だ。
 さらに雨などが降ればさらに危険な状態となる。地震の影響で地盤が緩んでおり、そこに降雨があれば土砂災害の恐れがある。急斜面に近寄らないなど、引き続き警戒が必要だ。早めの避難などで新たな被害を防ぎたい。
 救助活動も急ぐ必要がある。倒壊した建物の下には生き埋めになった人がいる可能性がある。県内からも那覇市消防本部の26人と災害派遣医療チームが16日、被災地に向け出発した。多くの命を救いたい。
 避難している住民の支援も忘れてはならない。熊本県だけでも9万人余りが避難している。地震の続発に神経をすり減らし、先の見えない避難生活に不安を募らせている。東日本大震災では劣悪な環境の避難所で多くの高齢者らが体調を崩し、震災関連死も相次いだ。身体的な安全確保を最優先させることは当然だが、生活物資の支援、仕切りやトイレ、女性への配慮など避難所運営にも工夫が必要だ。ストレスを軽減させるメンタルケアなどきめ細かい対策を進めたい。

不備多い原発対策

 今回、原子力規制庁が原発に異常がないことをホームページで発信したのは地震発生翌日の15日午前だった。規制庁は「反省点が多かった」と発信遅れを認めている。異常が起きていたら、どう責任を取るつもりだったのか。
 規制庁は原発の立地自治体で震度5弱以上の地震が起きた場合には、一般向けに情報発信するよう内部で取り決めている。今回の地震では全国で唯一稼働している九州電力川内原発が立地する鹿児島県薩摩川内市の震度は4だった。情報発信の必要性がないとの認識だったのだろう。今後は立地自治体以外でも周辺地域で大きな揺れがあれば情報発信する方向に改めるようだ。当然ではないか。
 今回の地震後も川内原発は運転を続けている。原発は一定以上の揺れの強さが観測されれば原子炉を自動停止する仕組みになっているが、観測値は自動停止の基準を下回っているようだ。果たしてそれでいいのか。
 気象庁は16日の記者会見で、熊本、阿蘇、大分へと地震が拡大している現象について「これほど広域的に続けて起きるようなことは珍しい」と述べ、前例のない地震であることを示した。11年の東日本大震災の地震では福島第1原発などで想定を超える揺れを観測した。福島第1原発の事故を見れば発生後の自動停止では手遅れなのは明らかだ。即座に稼働を停止すべきだ。