<社説>アジア経済戦略 空自那覇基地の返還を


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 この島の地理的優位性は宝だ。生かさない手はない。その方策を考える上で「沖縄のアジア経済戦略シンポジウム」の提言は示唆に富んでいた。一つ一つ実現したい。

 県のアジア経済戦略構想推進計画は「モノ・情報・サービスが集まる沖縄」をうたっている。
 問うべきはその道筋だ。県計画の重点戦略は「国際物流機能拡充と県経済への波及効果向上」を掲げる。だがシンポでは那覇空港の貨物取扱量が年20万トンに上るが、沖縄の商品はその1%しかないと指摘された。
 訪日観光客の増大で沖縄の知名度も向上し、県産品を海外へ売り出す素地はできつつある。沖縄独自の素材を生かした食品の創出もよく言われるが、日本ブランドへの信頼も生かし、この機に積極的に海外へ売り出したい。本土商材との組み合わせも求められよう。
 那覇空港の国際貨物ハブが成長した要因は離着陸の24時間化だが、検疫や入国審査の24時間化も提案された。ぜひ実現したい。
 空路と海上輸送との連携も提起された。低コストの海路で移輸入した素材を沖縄で加工・小分けし、付加価値の高い商品として空路で素早く消費地に届ける。そんなことが想定されている。
 航空機整備事業を核とする航空関連産業集積の可能性も示された。アジア主要都市のほとんどに一っ飛びで行ける那覇は、航空機の整備地としてもコスト面で有望なのだ。長い目で見れば格安航空会社(LCC)の世界的需要は拡大こそすれ、しぼむことはあり得ない。必然的に航空機は増え、その分整備需要も拡大の一途をたどるはずだ。その需要を見過ごす手はない。
 海空連携にしても航空機整備にしても、相当な空間を必要とする。だが今の那覇空港周辺は圧倒的に土地が足りない。ではどうするか。
 航空自衛隊那覇基地を返還すべきだ。狭隘(きょうあい)な空港周辺と比べ、空自那覇基地は超一等地でありながら、実に広大で、余裕があり過ぎる。大きな商機をみすみす見逃す余裕は、今の沖縄にはないはずだ。
 昨年も空自ヘリと民間機があわや衝突という例があった。ひとたび事故が起きれば観光業界の長年の努力は一気に吹き飛ぶ。その意味でも全面返還が望ましい。クルーズ船の寄港を断らざるを得ない状況の打開も急を要する。遊休化した那覇軍港を即刻返還し、クルーズ船のバースに充てるべきだ。