<社説>志賀原発に活断層 新基準に即し廃炉が当然


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 東京電力福島第1原発事故の反省はどこへ行ったのか。人の備えに万全はなく、何よりも安全を最優先すべきだということをわれわれは学んだのではなかったか。

 原子力規制委員会は、北陸電力志賀原発(石川県)1号機原子炉建屋直下を通る「S-1断層」が地震を起こす可能性のある断層(活断層)と指摘した有識者調査団の評価書を受理した。福島事故後の新規制基準は活断層の上への原発の立地を認めていない。評価書の指摘を覆すのは困難とされ、同原発1号機は廃炉が避けられない。
 しかし北陸電力は断層の活動性を否定している。原発の稼働に必要な適合性審査を申請し、審査過程で争う意向だ。北陸電の金井豊社長は「これまでの主張が否定されたわけではない」として徹底的に反論する考えを示している。
 地震を起こす恐れのある活断層の真上で、原発を稼働させることがどれほど危険かわきまえているのだろうか。北陸電は新基準に従い、廃炉を決断すべきだ。
 3・11以前の原発に対する安全規制は事業者の自主性に任され、不確実なリスクに対応して安全性の向上を目指す姿勢に欠けていた。
 その反省を踏まえ、新規制基準は大規模な自然災害の発生を想定し、二重、三重の備えを義務付けた。複数の電源確保や放射性物質の外部への飛散防止策などだ。だがそれらは活断層の上に原発を造らないことが大前提である。地震が原発の重要施設を直撃しては、それらの対策はいずれも無意味だ。
 熊本県や大分県で連続して起きた地震で、日本には多くの活断層が走り、いつ、どこでも大規模地震が起きることを認識させられた。
 新規制基準は「ずれや変形の量、地盤が押し上げる力の大きさを予測することは困難」と示す。3・11や熊本・大分の地震で経験したように、天災は人の想定をはるかに超える。リスクの大きな場所に原発を置く必要はない。
 北陸電は廃炉を再生エネルギーなどに経営資源を注力する契機としてもらいたい。電力小売り自由化に伴い、業界は新電力の参入で競争が激化している。だが原発の最終処分のコストと事故の危険を後世に押し付け、今だけ「安上がり」を享受しようとするのはあまりに無責任だ。
 原発回帰を強める国も、国民の安全を最優先するために再生エネルギーの普及支援を強化すべきだ。