<社説>在沖米軍の規律 人権感覚欠如は構造的だ


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 規律を重んじる軍隊組織で決まり事がいとも簡単に破られる。県民に被害を与えかねない危険な犯罪行為を続けるやからが絶えない。実効性のあまりの乏しさから、制度と呼ぶには無理がある。

 在沖米軍に規律を順守させることは限りなく不可能に近くないか。そんな疑念が付きまとう。
 米軍属による女性死体遺棄事件に対し、全県で怒りが強まる中、米海軍3等兵曹が22日未明、酒気帯び運転の現行犯で逮捕された。
 基準値の約2・5倍のアルコールが検知された容疑者は、米兵の深夜外出や飲酒を規制する「リバティー制度」に違反していた。容疑者の階級なら午前1時以降の外出禁止が課されている。それを破った上で酒を飲み車を運転していた。
 「綱紀粛正」「再発防止」という言葉が空虚に響くばかりだ。
 緩み切っている、空念仏、規律の機能不全、県民は恐怖の連続-。県内政党代表が発した強い怒りは、県民の命が危険にさらされている危機感を反映していよう。
 外出禁止措置にはそもそも抜け穴が多い。全米兵は外出時にゲートで身分証明書と自らの外出条件が記された資格証である「リバティーカード」を示す。外出規制の対象者が禁止時間を破って基地に戻れば「違反」が発覚するシステムだ。
 だが、規制が始まる前に出て、取り締まる時間帯を過ぎて戻れば免れることができる。逮捕された3等兵曹があと数時間、酒気帯び運転をしながら遊び歩き、規制時間後に基地に戻っていれば、違反は発覚しなかった可能性が濃厚だ。
 3月に那覇市内のホテルに泊まっていた米兵が起こした女性暴行事件の後、米軍人の事件・事故防止を協議する日米会合は、それまでの制度運用に欠陥があったかについて検証はなされなかった。
 米軍側の「努力」を喧伝(けんでん)する場になってしまい、再発防止に向けた厳密な検証が素通りされることが、何度も繰り返されてきた。
 日本政府側の弱腰がそれを許容している。日米双方の無責任体質が、米兵犯罪の横行を招いているのである。
 女性死体遺棄事件が殺人事件に発展する可能性が高くなる中、平然と酒気帯び運転できる米兵が出ることにあきれ果てる。二万数千人を擁する在沖米軍の規律と人権感覚の欠如はもはや構造化されている。在沖米軍は「良き隣人」を名乗ることをやめた方がいい。