<南風>女性と漢方


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 人体は昼夜、四季の変化の宇宙のリズムに対して、交感・副交感の自律神経、エネルギー消費・蓄積ホルモンの働きが、活動・休息のリズムに同調している。さらに社会生活による精神的ストレスや過労などの負担がかかり、自律神経やホルモンのバランスを崩し、体調不良の原因となる。

 女性の場合は男性にはない妊娠・出産・育児という役割が加わるため、バランスの仕組みがさらに複雑微妙になり、ストレスの影響をより受けやすくなる。
 女性は思春期になると生理が始まる。月経のあと次の排卵のために卵胞が発育し卵胞ホルモンが増え、排卵後は黄体が発育し黄体ホルモンが増える。2種類のホルモンの微妙なバランス変化で排卵と出血を繰り返し、生理に伴うさまざまな症状、生理痛、イライラ、頭痛、めまい、吐き気などを伴うことがある。
 さらに50歳前後になると閉経を迎えるので、その前後にもホルモンバランスの大きな変化が起こり自律神経も同調して、いわゆるホットフラッシュや精神不安、動悸(どうき)など更年期障害特有の症状を引き起こす。そこが男性とは違う女性の生理で、女性専門の外来が必要になるゆえんである。そして男性が理解しにくい部分でもある。
 漢方では後漢(ごかん)の時代の古典「傷寒論」にならぶ「金匱要略(きんきようりゃく)」にすでに婦人妊娠、産後、雑病篇(へん)が設けられ、女性特有の臨床に対応していた。その中に現在も広く婦人病に使用される当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)の他、喉に異物感を訴える、手足がほてる、感情を抑えられなくなる、不妊症などいろいろな症状に対する処方がみられる。また後世には月経前症候群に最もよく使用される加味逍遥散(かみしょうようさん)も創方され、漢方薬の効果を日々実感している。
 家事・育児・仕事と女性の負担の増える一方の現代社会では女性の不調は減りそうもないと心が痛む。
(仲原靖夫、仲原漢方クリニック院長)