<社説>県議選開票ミス 前代未聞の事態 再発防げ


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 未明に及ぶ開票作業で、いったん発表された最終得票数が破棄され、当選者と落選者が入れ替わってしまった。

 民主主義の根幹を支える4年に1度の重要な選挙で、あってはならない前代未聞の事態が起きた。
 5日投開票の県議会議員選挙で、得票数を集計していた県選挙管理委員会が開票速報を誤って発表した。候補者ごとの得票数を取り違えて集計した。
 その結果は重大である。
 伊江村、伊是名村で集計ミスがあった国頭郡区は、吉田勝広氏(無所属・現)の当選が幻となり、一転して具志堅透氏(自民・現)が当選した。北中城村で集計ミスがあった中頭郡区は当選順位が変わってしまった。
 選管最終の得票を踏まえた当選の報道を受け、喜びに沸いた吉田氏本人と支持者の心中を察すると言葉がない。落選の弁を述べた後、まばらになった選挙事務所で突然、当選の知らせを受けた具志堅氏も驚いたことだろう。
 県選管によると、職員が告示前に「あいうえお順」で作成していた予定候補者名簿を届け出順の名簿に変更することを忘れたまま、3村の得票数を記録する担当者に渡したことが原因だ。
 重要な作業を担った職員が、手順を怠った致命的なミスを防ぐチェック機能が働かなかった。開票の根幹に関わる事務作業を当人だけに担わせ、別の職員が誤りの有無を確認する段取りはなかった。
 驚くばかりの対応である。通常の行政や一般企業では通用しまい。
 県選管の当山尚幸委員長は「間違いで一喜一憂され、ぬか喜びされたなら申し訳ない」と謝罪した。一方で、「(選管から)『あなたは当選だ』と言ったわけではない。マスコミを通じて間違って当選と認識してしまったならば、申し訳ない」と述べた。
 正式には8日の選挙会で当選者を認定する段取りを踏まえた発言だが、単なる事務手続きに依拠し、ミスの本質に対する自覚が乏しい開き直りに映る。
 もし、国政選挙の開票作業で同様なミスが起きれば、当山委員長は中央選管や候補者に同じ言いぶりができるだろうか。
 今回の重大ミスにより、沖縄の選挙事務の実力に疑問符が突き付けられている。県選管は民主主義の根幹を支える使命感を強め、抜本的な再発防止策を示してほしい。