<社説>舛添氏調査報告 知事辞任こそけじめだ


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 東京都の舛添要一知事が自身の政治資金流用疑惑に関する弁護士の調査報告書を公表した。報告書は宿泊費6件や飲食費14件、美術品購入代計約440万円に私的な利用の疑いがあり、不適切な支出とした。その一方で「違法性はない」と結論付けた。

 弁護士も説明したように、政治資金の使途に法律上の制限はない。このため、支出が違法となることはない。つまり「違法性はない」との結論が出ることは初めから分かりきったことである。
 舛添氏に問われていることは、違法性があるかどうかではなく、政治家としてのモラルである。そのことが分かっていないのではないか。報告書を公表後、改めて続投を表明したが、都民の理解は到底得られまい。
 家族旅行の宿泊を会議費として政治資金から支出することは、どう考えても不適切である。舛添氏はそれさえ判断できなかったのである。5月の記者会見では「政治活動だが、疑念を招いた」としたばかりか、「説明責任は果たした」とまで言い切った。
 報告書の正当性にも疑問がある。舛添氏は「調査は厳正に行ってもらった」としたが、果たしてそうか。
 舛添氏の別荘がある神奈川県湯河原町での下着やパジャマの購入は、舛添氏と秘書の説明を基に「公私混同はない」と判断された。中国・上海で購入したシルクの男性用中国服については、舛添氏が「書道の際に着用すると筆がスムーズになる」と説明してその様子を見せたことで、弁護士は「書道は政治活動にも役立っており、説明は具体的で説得力がある」とした。これに納得する人がいるだろうか。
 弁護士は、舛添氏が家族旅行で泊まったホテルで部屋に招いたという出版社社長にヒアリングをしていない。調査が尽くされたとは認められない。
 舛添氏は「違法性はない」との調査結果を知事に居座る根拠とすることは厳に慎むべきである。
 舛添氏は不適切と指摘された宿泊費や飲食費を返金し、別荘は第三者に売却することを「私なりのけじめ」とした。返金は当然であり、これをけじめと認めることはできない。
 もはや、信頼回復に努めて済むレベルの問題ではない。知事辞任こそがけじめになる。