<社説>食物アレルギー きめ細かな対応が必要だ


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 沖縄観光中に「ジーマーミ豆腐」を食べた食物アレルギーの子どもが、呼吸困難などを伴う急性アレルギー反応「アナフィラキシーショック」を起こす事例が出ている。

 「ジーマーミー」を落花生(ピーナツ)と知らずに食べる例がほとんどで、県立北部病院の医師によると低年齢の子どもが多く、中には意識のない状態で搬送された事例もあった。
 アレルギーを引き起こす食物の上位10品目に鶏卵や乳製品、甲殻類とともに、落花生も入る。日本学校保健会によると、児童生徒のアレルギー原因食物はこの10品目で88・8%を占める。
 那覇市教育委員会の今年1月の調べでは食物アレルギーのある小学生は1082人(全体の5・4%)、中学生で585人(同6・3%)いる。普段は摂取してアレルギー症状がない場合でも、2時間以内に運動をすると発症することもあるというから油断はできない。
 食品衛生法では、症例が多く重症化しやすい食物である「エビ、カニ、小麦、そば、卵、乳、落花生」の7品目を使った食品には原材料の表示義務がある。
 県内で消費されるジーマーミ豆腐にも、原材料として「落花生」の表記があり、県民の多くは落花生が入っていることを知っている。しかし、初めて沖縄を訪れた観光客は知らない人がほとんどだろう。卵や乳製品などのアレルギーはよく知られているが、落花生は盲点だったといえよう。
 食物アレルギーは原因食物を除去することで予防できる。メニューに原材料が落花生であることを表記し、販売する際に一声掛けるなど飲食店で対策を取ることが必要だ。
 県内では民間団体が食物アレルギーに対応したレストランやホテルを紹介したガイドブックを発刊した。アレルギーで不安を持つ人たちにも役に立つだろう。
 皮をむいた落花生を根気よく擦り、木綿のさらしに包んで汁をこす。手間暇をかけた分、香り高いジーマーミ豆腐ができる。多くの人に味わってほしい沖縄の一品だ。
 必要以上に怖がらず、食物アレルギーのある人には原材料や調理法が分かるようなきめ細かな配慮を心掛けることが、観光立県沖縄の務めである。より安心で安全な旅を提供できるよう、官民双方での対応が必要だ。