<社説>米大使館課長発言 日米地位協定は機能不全だ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 日米地位協定の抜本的改定を求める県議団の要請に対し、信じ難い発言があった。在日米大使館のアーロン・スナイプ安全保障政策課長は「日米地位協定があるから米軍は管理されている。地位協定は機能している」と述べた。

 米軍関係者による事件・事故が繰り返される背景に、差別的な地位協定があるのは常識だ。現実に起きている問題から目をそらし「地位協定は機能している」と強弁する態度からは、解決への意思が感じられない。
 米国政府、米軍が沖縄の現状をどう認識しているか、よく分かる発言だ。結局、米軍関係者が沖縄では何をしても構わないという占領者意識の表れであろう。
 スナイプ氏が言う「地位協定が機能」した例は幾つもある。
 2003年に起きた強盗致傷事件では、基地内で身柄を確保された米兵2人が拘禁施設に収容されず、基地内を行き来した。共犯者同士が証拠隠滅や口裏合わせできる状況を米軍自体が許していた。
 06年のタクシー強盗事件では、基地内で拘束された米兵2人の供述から、別の米兵1人の関与が分かったが、既に帰国した後だった。
 08年に金武町伊芸区で起きた被弾事件では、県警の立ち入り調査の実現に1年近くもかかった。当時の県警刑事部長が県議会答弁で地位協定が捜査の障害となったことを認めた。
 身柄引き渡しの拒否や基地内の排他的管理権という地位協定が実害をもたらしているのは明らかだ。基地内に駆け込めば逃げ得、証拠隠滅もやりたい放題である。地位協定は米軍関係者の犯罪を見逃す「機能」こそ果たしているが、「管理」できているとは言えない。
 スナイプ氏はこうも述べた。「軍人が全て悪いのか」と。
 罪を犯すのは米軍人の一部でしかないことは承知だ。県民は全ての軍人が悪いと言っているのではない。犯罪が繰り返される温床である地位協定を放置し、平和な生活を脅かす構造的差別に対してこそ、より激しい憤りがあるのだ。
 県議会は復帰後、地位協定改定を求める決議を30回可決した。党派を超えた全県民の要求だ。日米両政府はその重みを理解せず「運用改善」でごまかそうとしている。
 沖縄での差別を放置するなら解決策は一つだ。米本国でも県外でも構わない。在沖米軍基地を移すしか選択肢は残されていない。