<社説>県、提訴せず 国は辺野古固執より協議を


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 裁判で争うのではなく、話し合いで解決の道を探る。国と県は対等で協力関係にあるべきだという地方自治法上の関係性、地方分権の観点から見ても妥当な判断だ。

 翁長雄志知事は名護市辺野古の埋め立て承認取り消しに対する国の是正指示について、国地方係争処理委員会が法の適否の判断を避けたことを受け、県からは提訴しないと国に伝えた。さらに話し合いに向け早期の協議開催も求めた。
 そもそもなぜ、県があえて協議開催を求めたのか。
 前知事が承認した米軍普天間飛行場の移設のための辺野古沿岸部埋め立てを、翁長知事は2015年10月に取り消した。国は知事の取り消しを撤回させるための代執行訴訟を起こしたが、今年3月、裁判所の提案を国、県双方が受け入れて和解が成立した。
 和解案に基づいて国は代執行訴訟など三つの訴訟をいったんは取り下げたが、すぐに承認取り消しの是正指示に踏み切り、協議は実質的に不要だとの姿勢を鮮明にした。和解案にある「『円満解決』に向けた協議を行う」に背を向けた格好だ。
 県は、国の是正指示を不服として、第三者機関である係争委に審査を申し出た。
 係争委は17日、是正指示が適法か違法かは判断せず、国と県が「普天間飛行場の返還という共通の目標に向けて真摯(しんし)に協議し、双方が納得できる結果を導き出す努力をすることが、問題解決に向けての最善の道である」とした。
 裁判所の和解案、係争委の結論ともに国、県に話し合いを求めているのに対し、国は一日も早く辺野古の工事を再開させたいとの姿勢を崩さない。
 菅義偉官房長官は会見で「是正措置は違法と判断されていない」として、県から提訴すべきだと主張した。県から提訴すれば和解案にある裁判の流れに添い、より早く結論が出るとみているからだ。
 県が提訴しないと決定したことで、今後は国が知事の承認取り消しの違法確認訴訟を提起し、国が勝訴した場合、さらに代執行訴訟に進むと予想される。「円満解決に向けた協議」とは真逆の方向だ。
 この状態で問題が解決しないというのが裁判所と係争委の結論である。法治国家であるならば、結論を受け止め、辺野古に固執しない解決策を模索すべきだ。