<社説>観光収入6千億円 新たな魅力創出の機会に


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 2015年度の観光収入が6022億1400万円となり、初めて6千億円の大台に到達した。14年度に比べ12・7%増、1年で約680億円の伸びとなった。

 背景にあるのは外国人観光客の増加だ。15年度は約167万人で14年度比69%増となっている。
 観光収入の内訳は、国内客が4642億円で前年度比151億円の増加。外国人客が1380億円で同528億円増となっている。15年度の観光収入の増加分のうち約78%を外国人観光客が上積みした形だ。
 県は16年度の観光収入目標を6743億円に設定した。目標達成に向けては、外国人観光客を受け入れるため大型旅客船が寄港する港湾の整備といったハード面に加え、滞在日数を延ばすための新たな観光ルート開発などソフト面にも力を注ぐ必要がある。
 中でも観光客の滞在日数増加は、好調な沖縄観光にとって改善すべき重要な課題の一つといえる。
 ピークだった1988年に平均滞在日数は5・20日だったが、96年に4日以下となり、97年は4・19日と持ち直したものの、その後は3・8日前後で推移している。
 滞在日数を増やさなければならないのは、消費額に直結するからだ。そのためには、外部から影響を受けない、沖縄観光の魅力を創出する必要性がある。
 県は御嶽や伝統行事を「海洋文化遺産群」「祈りの島」の2テーマに絞り、物語性を持たせた観光ルート開発に着手する方針だ。各地の観光資源をポイントごとに紹介するのではなく、関連性を持たせたコースとして訪れてもらう狙いだ。外国人客を呼び込む国土交通省の「広域観光周遊ルート」にも沖縄は指定されており、国の支援も受けながら新たな観光の魅力をつくる好機が到来したといえる。
 県が市町村を対象にした観光の課題調査では、こうした広域連携について「メリットがよく分からない」「人的パワーが不足している」「市町村の枠を超えて活用できる予算が不足している」などの回答があった。
 観光は県経済の柱であり、好調を持続する今だからこそ、県と市町村が一体となって、多くの課題を解決する機会としたい。
 観光関連の指標はいずれも過去最高を更新し続けている。持続的な発展につなげるためにも、リゾート地としての魅力を定着させる戦略を確立しなければならない。