<社説>文化財調査不許可 欠陥協定を直ちに改めよ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 日米両政府が昨年9月に締結した環境補足協定が障壁となり、県教育委員会が米軍普天間飛行場で予定する埋蔵文化財発掘調査を米軍が断っていたことが分かった。

 環境補足協定では調査開始時期を「返還日の7カ月前を超えない範囲」と規定している。米軍はそれを忠実に守っただけのことかもしれない。とすれば、環境補足協定そのものに重大な欠陥があるということだ。
 県は「少なくとも返還3年前からの立ち入り調査」を求めてきた。日本政府は県の要求を基に米側と協議したのかとの疑念さえ湧く。いずれにせよ、実効性のない協定を締結した日本政府の責任は極めて重大である。
 返還される米軍基地の跡利用を円滑に進めるためには、返還前から埋蔵文化財の調査や環境汚染の有無を丹念に調べることが不可欠だ。
 県教委は普天間飛行場での埋蔵文化財調査を1999年度から実施してきた。それが環境補足協定によって、これまで認められてきた調査が不許可となり、めどさえ立たないとあっては何のための協定か。「だまし討ち」といっても過言ではない。日米両政府の不作為は許されるものではない。
 宜野湾市基地政策部は「規定がないからこそ司令官の権限やローカルルールで対応していた。協定が結ばれたことで逆に後退した側面が否めない。締結前から懸念されていた」と指摘している。
 政府には宜野湾市のような分析力や当事者意識が決定的に欠けている。協定締結の際、菅義偉官房長官や岸田文雄外相は「歴史的な意義を有する」と評価した。安倍晋三首相は「安倍政権になって環境補足協定のような事実上の地位協定の改定を行うことができた」と成果を強調している。この協定に誇るべき点などない。自画自賛にも程がある。
 日本側が要求する米軍基地内の立ち入り調査は、全て即座に認められなければ跡利用や環境保全に支障を来す。日本政府は直ちに米側と交渉し、実効性のあるものに改めるべきだ。
 環境補足協定は、日米地位協定の環境管理分野の日米協力に関する協定である。地位協定そのものを抜本改定しない限り、あらゆる問題は改善されないことを環境補足協定が証明した。小手先の対応はもはや許されない。日米地位協定の抜本改定を強く求める。