<社説>無人偵察機研究 武器輸出大国目指すのか


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 5年前にこのような事態が予想されただろうか。防衛装備庁がイスラエルと、無人偵察機の共同研究の準備を進めているという。歯止めなき武器開発・輸出国に道を開く暴挙であり容認できない。

 日本は長く武器の輸出や研究を制限する「武器輸出三原則」を国是としたが、安倍政権はこれをかなぐり捨て、日本の安全保障や国際協力に資する場合は輸出を認めるとする「防衛装備移転三原則」(新三原則)へと転換した。
 日本の安全に資するなどと聞こえはいいが、要は日本の軍需産業の武器輸出を後押しし外貨を稼ごうということだ。
 安倍政権は武器輸出の規制緩和とともに原発の輸出にも力を入れており、武器と原発を成長戦略の柱に据える意図がうかがえる。
 イスラエルの無人機技術は世界最高レベルと言われ、共同研究はこの無人機技術に日本のセンサー技術を組み入れる狙いとされる。
 防衛装備庁は無人偵察機の共同研究を、無人戦闘機や無人攻撃機を含めた開発に発展させたい考えとされる。まさに人殺しの武器開発に直結する共同研究と言わざるを得ない。
 パレスチナ問題を抱えるイスラエルとの共同研究は、周辺アラブ諸国から強い反発を呼ぶことは間違いない。
 共同研究が無人戦闘機の開発へと進めば、イスラエルの紛争相手国から日本が仮想敵国とみなされることになりかねない。
 外交上の不利益を含め、日本の国益にかなうとは到底思えない。
 以前の武器輸出三原則は「国際紛争の当事国」を禁輸対象としていたが、新三原則は事実上、禁輸国を北朝鮮のみに狭めた。紛争国イスラエルとの共同研究により日本は、際限のない武器輸出国へと歩みだすことになる。
 共同研究に向け、既に日本、イスラエル両国の軍需産業にも参加が打診されているという。国民の知らぬ間に、水面下で事が進んでいたことに驚きと恐怖を覚える。
 核兵器を持たず武器を輸出しない日本の平和主義が、足元から瓦解しようとしている。国民はそれを望んでいるだろうか。
 政府はイスラエルとの研究のみならず武器輸出・開発に関するあらゆる情報を開示すべきだ。国民に目隠しをしたまま武器輸出大国へ突き進むことは許されない。