<社説>IUCN勧告案 辺野古阻止へ国際圧力を


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 辺野古新基地建設の土砂搬入で危惧される外来生物侵入の問題が、9月の国際自然保護連合(IUCN)総会で議論されることになった。日本自然保護協会などの提起を受け、IUCN総会で日本政府への勧告案が採決に付される。

 国内の環境保護6団体は普天間飛行場の辺野古移設計画を批判し、ジュゴンやウミガメ、サンゴなど貴重生物と自然環境の保護を訴えてきた。
 これを受け自然保護の国際的な権威であるIUCNは2000年、04年、08年の3度、日本政府に対しジュゴン保護などの勧告を行っているが、自然保護の国際世論に背を向け、政府は強引に辺野古新基地建設を進めている。
 辺野古海域の埋め立てには2100万立方メートル、県庁70棟分もの土砂の投入が予定される。海域の埋め立てはそれ自体、海洋生態系を破壊するが、加えて土砂に混じって搬入される外来生物の影響がクローズアップされている。
 埋め立て土砂は国内6県7地区からも搬入する計画だが、これらの地区ではアルゼンチンアリやセアカゴケグモなど在来種を駆逐したり毒性があったりする生物9種が確認された。侵入すれば生態系への深刻な影響が懸念される。
 昨年11月に外来生物の混入する土砂の搬入を規制する県条例が施行されたが、実効性には疑問がある。広大な海域を埋め立てる大量の土砂に微細な有害生物が混入していないかの万全なチェックが、果たして可能なのか。
 北部三村の陸海域の「やんばる国立公園」指定が決まったばかりだが、同地区は世界自然遺産の有力候補地でもある。近隣の辺野古地区に外来生物の侵入を許せば、やんばるの固有動植物、生物多様性に影響を及ぼす可能性がある。
 日本政府は10年の生物多様性条約締約国会議の議長国を務めた。IUCN総会で審議される外来生物対策の勧告案の論議に、政府は真摯(しんし)に向き合う責任がある。
 世界自然遺産はIUCNの勧告を受け決まる。辺野古基地建設によるジュゴンへの影響や外来生物への政府の対応は、やんばるの世界自然遺産登録の成否をも左右しかねない。
 IUCN総会には稲嶺進名護市長が参加を決めている。県も参加すべきだ。日本自然保護協会ほか国内、県内の各団体が連携し、無謀な辺野古基地建設を阻止する国際圧力を高めてほしい。

英文へ→Editorial: IUCN proposed recommendation will add to international pressure to stop Henoko base