<社説>参院選 新基地問題 優れて民主主義の問題だ


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 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う新基地建設の是非は、参院選沖縄選挙区で最大の争点である。だが、全国的には争点になっていない。

 民主主義と国の在り方を考える上で、新基地建設問題を避けて通ることはできない。各党や各選挙区の候補者は活発な論戦を繰り広げるべきだ。
 2014年12月の衆院選では、沖縄選挙区の全てで新基地建設に反対する候補が当選し、推進派は敗れた。この年1月の名護市長選、11月の知事選でも県民は新基地反対の意思を示している。
 直接不利益を受ける住民の意向を尊重することは当然である。選挙で示された民意ならなおさらだ。だが、安倍政権は沖縄の民意を一顧だにせず「辺野古移設が唯一の解決策」との姿勢を変えていない。
 このことは、優れて民主主義の根幹に関わる問題である。民主主義国家の国会議員を志すならば、この問題を放置することがあってはならない。比例代表を含めて全候補者はそのことを十分認識し、新基地問題の論戦を巻き起こしてほしい。
 共同通信社が6月に実施した参院選立候補予定者を対象にした政策アンケート(回答者310人)では、辺野古移設について全体の44・7%が「賛成」、39・2%が「反対」、16・2%が「その他・無回答」だった。
 「賛成」が「反対」を約5ポイント上回ったのは、政府が喧伝(けんでん)する「軍事的な地理的優位性」が影響している可能性がある。だが、それは国内移設を封じることを狙った方便にすぎない。
 森本敏氏は防衛相退任の際、普天間飛行場の移設先は「軍事的には沖縄でなくてもいいが、政治的に考えると沖縄が最適の地域だ」と述べている。地理的優位性が虚構であることは明らかだ。
 中国脅威論も誇張が過ぎる。最も効果的な抑止力は、良好な両国関係の構築である。安全保障を軍事に依存する国で果たしていいのか。新基地建設問題を通して、国の在り方が問われてもいる。
 普天間飛行場の危険性除去には、県内移設と県外・国外移設のいずれが最善の選択なのか。有権者は政党や候補者の政策をしっかり吟味し、沖縄の将来を考えた上で、1票を投じる責任があることを自覚したい。