<社説>米兵飲酒運転逮捕 不祥事絶てぬ無責任体質


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 沖縄駐留の米軍は海兵隊、空軍、陸軍、海軍の全4軍が居座り、2万数千人の兵士が国土の0・6%しかない島に集中する。

 分母が大きい分、事件・事故を起こす兵士が紛れ込むことは仕方ない-。在沖米軍はそんな無責任な思考回路に陥っていまいか。
 県民の生命、人権を脅かす事件・事故が後を絶たない中、「綱紀粛正」が空念仏に堕すことは許されない。
 だが、沖縄社会の険しい視線を浴びているにもかかわらず、在沖米軍の綱紀はずっと緩み切っている。もはや、末端兵士にまで、自らを律することを課すことは無理を来しているのだろう。
 嘉手納基地所属の兵長の男が酒に酔った状態で車を運転して追突事故を起こし、沖縄署に道路交通法違反(酒気帯び運転)の現行犯で逮捕された。「バーでビールを2、3杯飲んだ」と容疑を認めた兵長の呼気から、基準値の約5倍のアルコールが検知された。
 女性殺人事件で軍属の容疑者が逮捕されたことを受け、在沖米軍は5月27日から全ての軍人と軍属を対象に基地外での飲酒を規制する命令を出していた。6月28日に解除してから、2人目の飲酒運転による逮捕者となる。
 厳格な規律保持が徹底されて当然のはずの軍隊組織で、危険極まりない飲酒運転が後を絶たない。逮捕されるのは氷山の一角で、飲酒して車を持ち出している危険な兵士らはもっと多いのではないか。
 「良き隣人」を名乗ることさえ恥ずかしい、ぶざまなありさまを在沖米軍の幹部、沖縄に基地を置き続ける日米両政府はどう受け止めているのか、疑問ばかりが募る。
 3月に那覇市内のホテルで発生した米兵による女性暴行事件後、基地外飲酒や深夜外出を禁じた「リバティー制度」の違反者数に関し、在沖海兵隊は「個人に対する行政処分は公表できない」と、違反兵士数の公表を拒んでいる。
 米軍は日米地位協定が定める特権に守られ、基地内に逃げ込めば逮捕されず、証拠隠滅もたやすい。たがが緩みやすい特権意識に加え、米軍が規律違反者数を公にしないのであれば、「綱紀粛正」が行き届いているのかさえ検証できない。
 こうした軍の体質も不祥事頻発の要因になっていよう。
 県民を脅かす事件・事故の根絶の特効薬は、在沖米軍基地と兵員をゼロに近づけることしかない。