<社説>法軽視の着陸帯工事 「法治国家」の名に値せず


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 日本は法治国家のはずだ。国民には基本的人権が保障され、行政は法に従って行動すべきである。

 しかし東村と国頭村に広がる米軍北部訓練場でのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)工事の実態を見ると、法を軽視し、解釈をねじ曲げてでも工事を強行したい国の姿が見える。沖縄での振る舞いに関して言えば、もはや日本は「法治国家」の名に値しない。
 沖縄防衛局が着陸帯建設を進めるため県道に設置した金網について、中谷元・防衛相は「(当初は)道路交通法の範囲内で設置できると考えていた」と法的根拠がないことを認めた。
 本来なら県道側の金網は、道路法に基づき管理者である県の許可を得なければならない。防衛相が考える道路交通法による道路の占用は工事や露店などを想定したものだ。県の指導に従い、防衛局が金網を撤去したことからも法解釈が誤っていたことは明らかだろう。
 これ以外にも法的根拠が曖昧なまま、防衛局が住民の抗議テントを撤去したり、県警が県道70号を封鎖し、不必要な検問をしたりしている。法を順守すべき公務員が、率先して東村高江では無法状態をつくり出しているのだ。
 中谷氏はテント撤去の根拠について防衛省設置法4条19号を挙げている。だが条文は「駐留軍の使用に供する施設及び区域の決定、取得及び提供並びに駐留軍に提供した施設及び区域の使用条件の変更及び返還に関すること」と記すのみだ。「返還に関する」業務に抗議行動を圧倒的な権力で排除することが含まれているのか。常識で考えて全く読み取れない。根拠なく住民の私物を無断で持ち去った行為は「窃盗」とすら言える。県警も安全確保や混乱回避などを理由としているが必要性は疑問だ。
 防衛相らは改めて条文を読み直してもらいたい。住民は地元の意向を無視した新たな軍事関連施設建設に抗議しているのだ。そうした表現の自由や集会の自由を国が脅かす根拠はどこにもない。
 菅義偉官房長官ら政権幹部は「わが国は法治国家」と言う。「わが国」に沖縄は含まれているのか。高江の現状に対して胸を張って言えるのか。
 国による法軽視の現状を打開する方法は一つしかない。着陸帯工事をやめることだ。住民の人権を踏みにじり、環境を破壊する工事を止めてこそ、初めて「法治国家」と名乗れるはずだ。