<社説>基地と予算リンク論 恫喝政治の表れだ 沖縄への揺さぶりやめよ

 予算を締め付けることで沖縄は屈すると思っているのだろうか。

 菅義偉官房長官は4日の会見で基地問題の進捗(しんちょく)が沖縄関係予算に影響すると述べた。鶴保庸介沖縄担当相も同調した。いわゆる「リンク論」である。リンクを否定してきた歴代政権の方針を180度転換した。
 基地問題で政府の意のままにならない沖縄県を金でねじ伏せようとする、安倍政権の持つ恫喝(どうかつ)政治の本性をあらわにした。
 ここで冷静に沖縄関係予算について見てみたい。

 ピーク時の半額に

 基地と予算のリンク論といえば、1998年の大田昌秀知事から稲嶺恵一知事への交代時が思い浮かぶ。
 沖縄関係予算のピークは大田県政の最後の年、98年度の4713億円だ。しかし予算決定後の98年2月、大田知事は米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対を表明した。政府は翌99年度予算を前年度から約900億円減らした。
 98年の知事選で、移設を容認する稲嶺氏が当選すると、政府はサミットを開催し、年間100億円の「北部振興事業」などを始めた。基地を受け入れた沖縄に政府が大盤振る舞いをしたかに見える。
 しかし沖縄関係予算は移設を容認した稲嶺県政、仲井真弘多県政で逆に大きく減少した。仲井真県政1期目最後の2011年度は2317億円と、ピーク時のほぼ半額になった。
 沖縄に約束した北部振興事業や基地所在市町村に対する活性化事業(島田懇事業)の費用は沖縄関係予算の他の項目を削って捻出された。「基地受け入れの配慮」として予算を上乗せしたのではなく、振り替えにすぎなかった。
 政府にとっては基地問題とのリンクは脅しの材料にはなっても、予算増にはつながっていない。
 では、沖縄は他道府県に比べ、国から多く予算を得ているのか。
 沖縄県の14年度予算額は7433億円だ。人口1人当たりで割ると52万3千円で、全国の道府県で5位だ(東北3県を除く)。
 沖縄県は、1人当たり予算額が全国一になったことは復帰後44年間、一度もない。4位から11位の間を上下している。
 沖縄県は国土面積の0・6%、人口は1・1%を占めるにすぎない小さな県だが、全国の米軍専用施設の74・48%が集中する。基地負担は県民生活に重くのし掛かっている。基地は振興の阻害要因にもなっている。しかし、沖縄が他道府県より群を抜いて国の予算を得ているわけではない。

 振興法の理念掲げよ

 基地と予算がリンクするというなら、全国の4分の3を負う沖縄は基地の負担料を含めた多額の予算が投じられただろう。しかし沖縄の予算はほぼ他県並みだ。リンク論を巧妙に避けてきたのは、実は歴代政権なのではないか。
 安倍政権は法の精神をも踏みにじる。沖縄振興の根拠法である沖縄振興法には第1章第1条に「沖縄の自主性を尊重しつつ総合的かつ計画的な振興を図る」とある。辺野古の新基地建設について県知事や地元名護市長が反対し、選挙でも反対の民意が示されたのに、基地建設を進めようとするのは、沖縄の自主性を全く顧みていないということだ。
 記者会見で菅氏は「工事が進まなければ予算も少なくなるのは当然」と述べたが、辺野古の工事は防衛予算で、沖縄関係予算ではない。ちぐはぐな答弁は、減額の理屈付けすらできていないことを示す。
 「法治国家」と言いながら、法の趣旨も無視し、予算措置の理屈もなく、ただ遮二無二、翁長県政に揺さぶりを掛ける。
 全国知事会は翁長雄志知事の「沖縄の基地問題は日本の民主主義と地方自治の問題だ」との呼び掛けに応じて研究会を設置した。政府の姿勢も問われるだろう。沖縄県は振興法の理念を掲げ、自主性を第一に振興を図るべきだ。