<社説>NIE全国大会 わくわくする新聞目指して


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 学校の授業など教育現場で新聞を活用する「NIE」(教育に新聞を)の実践報告をする第21回NIE全国大会が大分県で開催された。

 大会テーマは「新聞でわくわく 社会と向き合うNIE」。新聞を読んで「わくわく、どきどきする」、様々な興味やアイデアが「わく」ような紙面を提供しているだろうか。自問しながら、子どもたちが新聞を通じて社会に目を向け、よりよい社会づくりへと向かう力を育む紙面作りを目指したい。
 全体会で、日本新聞協会NIEコーディネーターの関口修司氏が、「NIEタイム」を導入後、国語や算数の学力が向上したという東京都内の小学校のデータを紹介した。読書好きを増やし、活字離れに効果があり、読解力がつくことを証明した。
 しかも授業時間外の隙間にやることがポイントだ。朝の時間のわずか15分を使って新聞を読み、気に入った記事を切り抜きして要約、感想を書く。学力テストのように成果を求めるのではなく、新聞を使って自由に活動するうちに力を付けるという。
 沖縄県内のNIE実践校も学力向上につながっているという声を聞く。ぜひ、県内の成果をデータで示してほしい。NIEの一層の広がりに期待したい。
 今年7月、選挙権年齢が18歳以上に引き下げられてから初めて国政選挙が行われた。特別分科会で「主権者教育とNIE」をテーマに討議した。この分野は試行錯誤の段階だ。小学校から自由に意見表明する場を育む必要性が指摘された。そのためには、新聞が主権者教育の有効な材料となるよう工夫する必要がある。
 記念講演は、大分県出身で芥川賞作家の小野正嗣さんが、多様性を認める社会を実現するために、新聞は大切な役割を担うと強調した。小野さんは「新聞は虐げられ、損ねられ、差別された人の声も受け止めて包み込む」とも語った。
 しかし、国際NGOが発表した2016年の「報道の自由度ランキング」で日本は、対象の180カ国・地域のうち、前年より順位が下がって72位だった。新聞人が襟を正して多様性、独立性を確保する努力が求められる。
 今回の全国大会ではNIEの効果が報告された。今後はさらなる組織化、可視化、日常化に向けた取り組みに期待したい。