<社説>モズクゲノム解読 品種改良と産業化に期待


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 沖縄科学技術大学院大学(OIST)と県水産海洋技術センターなどの研究チームが、オキナワモズクの全遺伝子情報(ゲノム)の解読に成功した。

 オキナワモズクには、抗炎症作用など健康効果があるフコイダンが多く含まれている。今回のゲノム解読によって、モズクの安定生産が可能な新品種の開発、フコイダンなどの機能性成分を生かした商品化を進め産業化につなげてほしい。
 今回解析したのはオキナワモズクのうち、収量が多いなどの特徴を持ち、昨年9月に県水産海洋技術センターが「イノーの恵み」として品種登録した株(グループ)。マコンブなど他の褐藻では4段階に分かれているフコイダンの生成工程(遺伝子)が、オキナワモズクでは3段階に減り、生成効率を高めている可能性があることが分かった。
 フコイダンは免疫力や肝機能の向上、中性脂肪の抑制、胃痛や胃もたれ(機能性胃腸症)の改善など、健康に欠かせない効能が明らかになっている。モズクは他の海藻類と比べてフコイダンを多く含むため、食用だけでなく抽出成分を活用した健康食品や化粧品にも利用されるなど商品開発が進みつつある。
 国内で養殖されるモズクの99%以上は県内で生産されている。しかし、年によって生産量が変動し、安定生産が課題となっている。沖縄総合事務局の2015年の漁業・養殖業の生産量まとめによると、モズク類は台風や日照不足から前年比30・6%減の約1万3396トンだった。
 モズクは比較的温かい海水が苦手とされるが、その中でも芽出しし、根切れせずに育つ株がある。しかし、遺伝子情報がないため、違う特徴を持つ株同士を掛け合わせて、環境変化に強い株をつくる研究は進んでいなかった。
 今後ともオキナワモズクのゲノム研究を継続、深化させて、天候など環境の変化に左右されない新品種の開発に期待したい。
 日本貿易振興機構(ジェトロ)は16年度に取り組む農林水産物の輸出支援策として、県産モズクの香港・台湾などへの輸出を対象に選んだ。アジア圏への進出を本格化させるために、安定生産と大量生成技術の確立が不可欠だ。漁業者と加工業者任せではなく、県を挙げて取り組みたい。