<社説>就学援助に格差 国は「義務教育無償」果たせ


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 教育を受ける権利は憲法に保障されている。しかし就学援助が市町村任せのため、援助に大きな格差が生じている。政府は就学援助を強化し「等しく教育を受ける権利」に対する責任を果たすべきだ。

 県内全市町村への琉球新報社の調査で、就学援助の基準所得額に大きな格差が判明した。
 親子2人暮らし世帯の場合で、課税所得額70万円以下を就学援助の対象とする自治体がある一方で、170万円で援助を受けられる自治体もある。
 実に約2・5倍の格差だ。親子4人世帯でも自治体の援助基準は、120万円から280万円まで、2倍以上の格差がある。
 格差の原因は何か。2005年以降、準要保護世帯への国庫補助が打ち切られた影響が大きい。
 一般財源で対応する市町村の援助基準はまちまちで、なおかつ「財政難」を理由に基準のハードルを上げ、財政力の弱い市町村ほど援助枠を狭める傾向にある。
 住む場所で就学援助に大きな不平等が生じており、「等しく教育を受ける権利」をうたう憲法の理念が揺らいでいる。
 援助対象を狭める傾向は全国でも同様だ。同時に援助額も抑制傾向にある。国の財政再建を目的とした国庫補助削減が就学援助を後退させていることは明らかだ。
 政府は自治体の財政力で格差が生じがちな就学援助の実態を精査し、必要な財政措置を行う責任がある。自治体間でまちまちな援助基準についても、不平等を生じない基準の統一化を図るべきだ。
 本紙の調査では、8市町村が民生委員の調査を要件としていることを疑問視する声があった。援助基準を過度に厳格化させず、生活に困窮する利用者に寄り添う基準・運用の緩和を市町村に求めたい。
 同時に市町村の担当者は「収入」「家賃」「車の所有」などの基準を分かりやすく広報し、制度の積極利用を働き掛けてほしい。
 県が創設した30億円の「県子どもの貧困対策推進基金」、内閣府が本年度に計上した10億円の「貧困緊急対策事業費」の有効活用も図りたい。
 「義務教育は無償」とする憲法26条により、公立小中学校の授業料、小学校の教科書は無償だ。
 だがそれだけでは不十分だ。児童生徒を学校に通わすには、さまざまな就学援助が不可欠だ。政府は対応を市町村任せにせず、必要な支援を講ずる責務がある。