<社説>沖国大ヘリ墜落12年 普天間の無条件全面返還を


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 米軍普天間基地所属のCH53D大型輸送ヘリコプターが、宜野湾市の沖縄国際大学に墜落してから12年になる。

 市街地の中心にある普天間飛行場の危険性を再認識した。オスプレイ配備で危険性はさらに増した。「世界一」の危険性を除去するには、無条件での全面返還しかない。
 2004年8月13日の米軍ヘリ墜落事故では、放射性物質ストロンチウム90が飛散した。その際、米軍は、宜野湾市の消防隊員に対して放射能検査をせず、検査の必要性も伝えなかった。にもかかわらず普天間基地所属の米軍救難消防隊員は検査していた。墜落当時も、米軍は機体が放射性物質を含むことすら沖縄側に一切伝えていなかった。
 自国に駐留する外国軍基地内にどんな物質があるのか、全く知らされない。根底には日米地位協定がある。米軍基地の運用に日本側が一切口出しできない。事故から12年たっても地位協定は改められていない。同様の事態が繰り返されないか懸念する。
 事故当時、民間地域での事故であるにもかかわらず、米軍が県警や宜野湾市消防、大学関係者を閉め出したことが問題となった。
 日本側が十分に事故原因を究明できなかった反省から、日米両政府は05年に「民間地での米軍機事故に関するガイドライン(指針)」をまとめた。民間地の事故現場の直近は日米共同で規制し、事故機の残骸と部品は米側が管理する内容だ。指針は米軍の関与を認め、特権が強化されたことを意味する。
 実際に08年、名護市で発生した米軍軽飛行機墜落事故で、指針に沿って県警の事故機差し押さえを米軍が拒否した。ヘリ墜落事故の教訓は全く生かされていないのだ。
 一方、普天間飛行場の5年以内の運用停止はどうなったか。
 中谷元・前防衛相は今年3月「辺野古移設への理解と協力が大前提だ」と、翁長雄志知事に述べた。そもそも5年以内の運用停止の「大前提」は、辺野古移設とは切り離し、国と県が危険な普天間飛行場の閉鎖が急務であるとの認識で一致したことであったはずだ。
 ここにきて安倍政権が普天間飛行場の固定化をにじませ、5年以内運用停止を人質に辺野古移設容認を迫るのは姑息(こそく)だ。12年間の政府対応を見ると、問題解決できないことは明らかだ。普天間飛行場の無条件全面返還しかない。