<社説>うるま沖墜落1年 米軍機に飛行する資格なし


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 うるま市伊計島南東の海上で、米軍MH60ヘリコプターが米海軍艦船への着艦に失敗し、墜落してから12日で1年がたった。しかし米側は事故原因について一切明らかにしていない。

 それなのに事故同型機は上空を飛行している。原因究明が置き去りにされたまま、住民の生命と安全を危険にさらしている。異常事態であり、このまま放置するわけにはいかない。
 そもそも墜落事故は沖合14キロ地点で起きており、日本の主権が及ぶ領海内だ。国内で航空機事故が発生すれば、国土交通省外局の運輸安全委員会が原因究明調査を実施する。調査結果に基づいて、事故原因関係者に対し、必要な施策・措置の実施を求める。事故の防止と被害の軽減を図るためだ。
 しかし、うるま市沖の墜落事故は米軍機による単独事故であることを理由に、運輸安全委員会の調査対象外となった。さらにヘリが墜落したのが米艦船上だったため、米軍敷地内への墜落になると判断された。このため日米地位協定を理由に、第11管区海上保安本部、県警の捜査権限も及ばなかった。
 現状では住民の生命を脅かす重大事故が国内で起きても、米軍機であれば日本側に原因究明と事故防止の対策を取ることはできない。12年前に起きた沖国大米軍ヘリ墜落事故でも、県警は米側に機体回収と乗組員の氏名公表を求めたが拒否された。日本側の捜査と調査を阻む治外法権が横たわる。あまりに不条理ではないか。
 米国防総省当局者は事故発生3日後、ヘリを運用していた陸軍特殊作戦司令部が事故原因を調査していることを明らかにした。しかし1年たった現在でも公表されていない。調査が完了していないか、調査結果が軍内部にとどまっているかのどちらかだろう。
 うるま市では1959年の宮森小米軍ジェット機墜落事故で18人の命が奪われた。61年にも川崎小近くにヘリとジェット機が墜落し、4人が死亡した。市民の中には過去の悲しい記憶が刻まれている。県内全体でも復帰後の44年間で46機の米軍航空機が墜落している。年に1回以上の頻度だ。沖縄の空は極めて危険な状態に置かれたままだ。
 これまでも米軍は事故原因を明らかにしないまま飛行を再開してきた。説明責任を果たさない以上、米軍は沖縄で航空機を飛行させる資格などない。