<社説>北朝鮮核開発表明 国際社会への挑発許すな


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 国際社会の脅威となる北朝鮮の核開発に歯止めが利かない。関係国は連携を強化し、北朝鮮の暴走を食い止めなければならない。

 北朝鮮が核兵器の原料となるプルトニウムの生産再開や濃縮ウランの核兵器利用を認めた。共同通信に文書で回答した。核開発の継続表明は、被爆国日本を失望させ、核兵器の根絶に向けて取り組む国際社会を挑発するものだ。
 北朝鮮の核問題を巡る6カ国協議は2007年、寧辺など核3施設の無能力化を盛り込んだ合意文書を発表した。しかし、北朝鮮はその後も核実験を繰り返し、13年には寧辺の核施設を再稼働する方針を表明した。今回のプルトニウム生産再開は6カ国協議の合意が白紙に戻ったことを意味する。
 朝鮮労働党の金正恩委員長は5月の党大会で核保有国としての立場を改めて宣言した。プルトニウム生産再開表明も、国際社会の制裁下で核兵器開発を加速化する姿勢をアピールするものだ。
 しかし、核兵器の威力によって他国の譲歩を迫るような外交手法は前世紀の遺物である。到底、国際社会の理解を得られない。北朝鮮は孤立化を深めるだけだ。
 共同通信への回答で北朝鮮は「米国の核戦争挑発策動を断固として粉砕し、国の自主権と尊厳、朝鮮半島の平和と安全を固く守るために核抑止力を保有した」と核武装を正当化した。しかし、6カ国協議の合意に背いて核施設を再稼働し、国連安保理決議に違反する核実験を強行してきた北朝鮮の主張はあまりに独り善がりだ。
 金氏は党大会で「世界の非核化を実現するために努力する」と述べ、核拡散防止義務を守る姿勢を明らかにした。その発言に実質が伴っているとは言い難い。核開発をやめ、国際社会と真摯に向き合うことが不可欠だ。
 国際社会が核廃絶の動きを具体化することも必要だ。その意味で、オバマ米政権が準備している核兵器の先制不使用宣言や、爆発を伴う核実験の禁止を呼び掛ける国連安保理決議案の提出は核廃絶の貴重な一歩だ。
 安倍晋三首相が、北朝鮮の脅威を理由にオバマ氏の核兵器の先制不使用政策に反対する意向を米太平洋軍司令官に伝えたと報じられた。事実であれば言語道断だ。北朝鮮の脅威をあおるのではなく、核廃絶に向けて国際社会をリードすることが被爆国日本の責務だ。