<社説>違法確認訴訟結審 埋立法を原点に司法判断を


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 翁長雄志知事による名護市辺野古の埋め立て承認取り消しに対して国が起こした不作為の違法確認訴訟が19日、結審した。

 判決は9月16日に言い渡される。翁長知事が行った辺野古埋め立て承認取り消しの適否と、その後に国が出した是正指示に応じない県の対応が「違法な不作為」に当たるかが争点となる。
 二つの争点のうち、翁長知事による承認取り消しの適否については、県知事の権限である公有水面埋立法の扱いを論点に据えるべきだ。
 ところが国は、埋め立てを承認した前知事の判断に焦点を当て、その承認に裁量権の乱用がなく、翁長知事が取り消したのは問題があると主張している。さらに埋め立てと基地建設に関して県知事の権限は限定的で、国防は国の裁量に委ねられ、環境保全についても「(県は)実行不可能な措置を強いている」と断じている。
 県は、そもそも国の埋め立ての出願が公有水面埋立法の基準を満たしていなかったことを理由に知事が承認を取り消したとし、承認に瑕疵(かし)があれば当然だとしている。公有水面埋立法に立脚した主張であり、正当性は県にある。
 県が申請した名護市長や安全保障、環境の専門家ら8人の意見陳述は認められず、2回の弁論で結審するというスピード審理となった。
 公有水面埋立法は、県知事の判断の根拠として「国土利用上適正で合理的であること」「環境保全および災害防止に十分配慮されていること」を挙げる。
 法の趣旨に踏み込んで、県知事の判断の根拠の適否や県知事の権限が限定的なのか否かを判断するならば、専門家の意見陳述が必要だった。わずか2回の弁論では足りないだろう。
 第2回口頭弁論も公有水面埋立法の問題よりも、県の対応が「不作為の違法」に当たるかに集中した。
 国と県が訴訟に至った問題の原点は、海を埋め立てて軍事基地を造ることの是非を問うことだ。公有水面埋立法の趣旨に基づいた本質的な議論をすべきだった。
 翁長知事は最終弁論で「このような事態が繰り返されると、日本の民主主義・地方自治は今後困難を極める」と指摘した。司法は問題の原点に立ち返り、正当な判断を下してほしい。