<社説>伊江島着陸帯強行 新たな基地負担を拒否する


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 地元の伊江村や県に詳細な説明もないまま新たな米軍強化の建設が強行された。沖縄の基地負担軽減に逆行する暴挙だ。工事の即時中止と、政府の説明を求める。

 米軍伊江島補助飛行場で強襲揚陸艦の甲板を模した着陸帯「LHDデッキ」の建設工事が始まった。
 「LHDデッキ」は耐熱特殊コンクリートを用いる。格段に強度を増し、オスプレイや新たに予定される垂直離着陸機・F35ステルス戦闘機による訓練激化は避けられない。
 新たな着陸帯は幅800メートル超と巨大で、面積は従来の5万4千平方メートルから10万7千平方メートルへ2倍に拡大する。施設規模の巨大さ、訓練内容の激化からして「改良工事」ではなく新着陸帯の建設に等しい。
 伊江島補助飛行場にはSACO(日米特別行動委員会)合意により1998年からパラシュート降下訓練が移転された。2012年のオスプレイ沖縄配備と同時に伊江飛行場への飛来、パラシュート訓練が激増した。F35戦闘機は騒音が大きく、米国で騒音を理由に米空軍が提訴された経緯がある。
 新着陸帯により飛来訓練がさらに増加し、墜落の危険や騒音、粉じん被害の基地負担が増すのは確実だ。村、議会、真謝、西崎両区が工事中止を求めるのも当然だ。
 伊江村だけの問題ではない。耐熱特殊コンクリートの着陸帯建設は辺野古新基地建設と連動したものと見るべきだろう。
 辺野古を拠点に北部訓練場ヘリパッド、伊江島間をオスプレイが本格運用され、北部の空を縦横無尽に飛び交う事態が懸念される。
 米海軍が14年から運用する新型「アメリカ級強襲揚陸艦」は海兵隊のオスプレイとF35戦闘機の運用を計画する。伊江島の新着陸帯が、新型揚陸艦運用に向けた訓練拠点であることは明白だ。
 辺野古新基地には強襲揚陸艦の接岸が可能な護岸が計画される。同基地のF35運用について沖縄防衛局職員が「運用は可能。あり得る」と説明した経緯もある。
 政府は辺野古新基地へのオスプレイ配備を長年隠蔽(いんぺい)し、ヘリ以外の航空機の運用についても明言を避けてきた。
 伊江島補助飛行場の新着陸帯は、新たな基地負担を強いる米軍運用の重大な変更だ。日米間の協議の内容を日本政府は明らかにすべきだ。米新型強襲揚陸艦の運用との関連や辺野古新基地との連動など、説明責任を果たしてもらいたい。