<社説>着陸帯抗議で負傷者 全ての責任は政府にある


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 米軍北部訓練場のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)に対する阻止行動で、機動隊の強制排除により2人の負傷者が出た。過度の警察活動に自制を求めるとともに、改めて政府の責任を指摘したい。

 住民、市民との激しい対立を生んだ原因者は政府だ。反対の声を無視し工事を強行したことが負傷者を出す事態を招いた。緊迫を深める局面を放置し、なお住民との対話を拒んだまま新たな負傷者、重大事故を招くことがあれば、全ての責任は政府にあることを指摘しておく。
 機動隊ともみ合う中で高齢の女性1人が指を切り、男性1人が胸に打撲を負った。着工後の緊急搬送は計5人となった。
 工事車両を止めようと公道に立ちふさがる。あるいは路上に車を駐車し車両の通行を阻む。こうした状況に機動隊が、市民や車両を排除する最小限の対応を取るのはやむを得ないかもしれない。それでも反対行動の市民を負傷させる過剰対応があってはならない。
 住民に負担を強いる基地建設に反対することは憲法が保障する権利だ。警察官職務執行法は警察職権に「必要な最小限度の行使」のたがをはめ、「濫用(らんよう)があってはならない」と戒めている。
 そもそも500人もの機動隊を投入し、県道を封鎖するなどの警察活動に対しては「明らかに必要最小限度を超えた市民活動の抑圧であり、基本的人権の尊重の観点から憲法違反の疑いがある」と憲法学の専門家は指摘している。
 2人が負傷した今回の事態の中で、機動隊の車両と隊員に囲い込まれた大勢の市民は、炎天下で2時間近くも行動を制圧された。
 飲み物もなくトイレにも行けない状態で長時間「監禁」したことは人権無視の批判を免れない。
 先日は本紙記者が現場から排除、拘束される事態もあった。報道の自由、知る権利の侵害、基地建設に反対する市民の表現の自由の侵害と、憲法違反を疑われる事態が続いている。
 県民の反対を無視し、あくまで建設を強行する政府の下請け機関の立場に、警察は自らをおとしめてはいないか。
 「個人の権利と自由を保護し、公共の安全と秩序を維持」(警察法第1条)することが民主警察の在るべき姿だ。基地建設の「国策」防護に偏り、「個人の権利と自由の保護」を忘れては国民、県民の信頼は得られない。