<社説>しまくとぅば普及 沖縄文化の基盤を守ろう


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 県のしまくとぅば普及推進専門部会で、2016~18年度の中期しまくとぅば普及推進行動計画(中期行動計画)案が示された。

 しまくとぅばに親しみを持たせる「気運醸成」を目指した前期(13~15年度)から発展させ、普及活動の中核を担う「しまくとぅば普及センター(仮称)」の設置検討を始めることが目玉だ。
 普及センターの設置によって、人材育成や活用をはじめ、官民の連携が深まり、県民がしまくとぅばに親しみやすく、さらに深く学ぶ環境がつくられることが期待される。
 センター機能の案としては人材育成に伴う人材バンクの設置、普及ツールの作成などが挙げられている。人材育成に関しては、15年度に県内10地域で養成講座が開かれ、322人が受講した。
 普及ツールとしては「しまくとぅば読本」「しまくとぅばハンドブック」などが作られ、小中学校や一般に配布されている。
 こうした人やモノを有機的に組み合わせることで効果的な普及活動が可能になるだろう。センターには人と人、人と活動団体を結び付ける機能が求められる。
 中期行動計画案では、表記法に関する調査を始めることも盛り込まれた。文字にすることで日常生活のあらゆる場面でしまくとぅばが使われる。それだけに表記法を明示することは重要だ。
 作家の佐藤優さんが常々主張するように、表記法の確立はウチナーンチュのアイデンティティー強化にもつながる。センターは普及活動だけでなく、こうした県内外の学識者をまとめた研究機能を強化する方向にも力を入れてほしい。
 改めて確認したいのは、われわれ県民がなぜしまくとぅばを普及・継承しなければならないかだ。
 しまくとぅばは組踊に代表される芸能など沖縄文化の基盤だ。しまくとぅばが失われれば、われわれは文化の基盤を失うことになる。
 県が13年に行った県民調査では「しまくとぅばを主に使う」のは10~40代で5%に達せず、60代以降で数値が高くなっている。しまくとぅばへの理解度には40代と50代に大きな壁があるのが実態だ。
 40代以下の世代に働き掛けなければ、しまくとぅばは衰退する。それを食い止めるのは今しかない。学校教育や社会教育で普及活動を行うに当たり「沖縄の文化を守る」という意識を県民で共有したい。