<社説>沖縄平和賞 難民生まない社会実現を


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 第8回沖縄平和賞は認定NPO法人難民支援協会(JAR)に決まった。

 国内外で「平和・非暴力の実現」「人間の安全保障」「内発的多様性を基礎とした平和実現」を促進してきた。平和賞にふさわしい団体である。
 難民支援と共に、難民を生まないような平和で非暴力な世界の実現が求められる。JARの一層の活躍に期待したい。
 難民とは、自ら望むのではなく命の危険などから国外へ移動を強いられる人々だ。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、2015年末時点で、紛争や迫害によって強制的な移住を余儀なくされた人は約6530万人に上る。うち約2100万人は国外に逃れた難民だ。難民の半数以上は18歳未満という。
 難民として保護されるには、難民申請手続きを通じて難民であることを証明しなければならない。日本は15年に7586人が申請し、認められたのは27人にすぎない。JARによると、認定にかかる期間は平均3年。その間にホームレスになる人も少なくない。
 難民問題とは、難民が問題なのではない。紛争や人権侵害など難民を生み出す社会の問題である。他方、少数者としての難民を受け入れられるか、それとも受け入れない社会なのかという問題でもある。日本の場合、難民を治安悪化につながる社会の不安要因、支援が必要な「重荷」と見ていないだろうか。
 JARは、国連難民高等弁務官事務所の事業実施契約パートナーとして、難民が来日した直後から自立するまで、難民認定の手続きや「医食住」の確保など、一人一人に寄り添って支援する。相談は年間約60カ国からの600人前後に上る。
 平和賞選考委員会は、JARの人道的活動の根本にある「多文化共生社会の実現」の精神は、沖縄戦をはじめ過酷な経験を経て、多文化を受容してきた沖縄の歴史的、文化的特性に根差し、恒久平和の創造に貢献するものとして創設された沖縄平和賞の理念に合致すると評価した。
 欧州には昨年、内戦下のシリアなどから100万人を超える難民や移民が流入した。難民を生み出さない国際的取り組みと、多様な価値と人権を重んじ、難民を受け入れる国内体制づくりが急務だ。