<社説>ペルー移民110年 「雄飛の精神」学びたい


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 沖縄からの契約移民36人が南米ペルーに渡ってから110年を迎えた。先人の労苦をねぎらい、飛躍を誓う記念式典が首都リマ市のペルー沖縄県人会館で開かれた。

 翁長雄志知事は「不屈の精神で試練を乗り越え、今日の県系社会の発展とその地位を築かれた。ペルーの発展に寄与されていることは、沖縄で暮らすウチナーンチュにとっても大きな誇りである」と述べた。同じ思いを抱く県民は多いだろう。
 当初の移民は過酷な労働を強いられ、マラリアにも苦しめられた。第2次世界大戦が勃発すると激しい排日運動にさらされ、戦後も1955年3月まで資産が凍結された。戦前、学校教育を受けるために沖縄をはじめ、日本に渡ったペルー生まれの2世は戦後十年余りもペルーへの帰国を拒否された。
 数々の苦難を乗り越え、日系社会発展の礎を築いた県系人に深く敬意を表したい。
 ペルーの県系人からは戦後、「戦災難民救援金」「戦災未亡人救援金」など、さまざな名目で母県沖縄への支援があった。戦後の混乱期、自らも生活に追われながらも、焦土と化したふるさと沖縄に物心両面の支援を続けた。そのことを忘れてはならない。
 52年3月に里帰りした具志堅善光ペルー沖縄人連盟会会長は、県系人からの支援金を琉球政府に届けた。その際、具志堅氏は「敗戦の苦難がいかに大きくとも、これを克服してこそ沖縄の真の繁栄と幸福がもたらされる」と県民を励ましている。ペルーをはじめとする海外移民の支援は、沖縄の復興を力強く後押しした。ペルー移民110年を機に、その歴史を改めてかみしめたい。
 困難を克服し、ペルー国民として国の発展に寄与する県系人の活躍は、新たな海外展開を目指す沖縄にとって大きな励みになる。
 県はアジア経済戦略構想を策定し、成長著しいアジアのダイナミズムと連動した観光リゾート産業や情報通信関連産業などの拡充・強化、国際物流拠点の形成などに取り組んでいる。移民の「海外雄飛の精神」を参考にしたい。それを学ぶことで明るい展望が開けよう。
 ペルーに約10万人いる日系人の7割を県系人が占めるという。県系人が沖縄のアイデンティティーを継承し、沖縄との絆をさらに強固なものとすることを期待したい。県民もその意識を強く持ちたい。