<社説>国頭に野犬の群れ 捨てないマナーを守ろう


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 沖縄本島北部の国頭村楚洲と安田周辺で野犬が群れをなし、住民が襲われそうになり、飼い犬が咬(か)まれるなどの被害が出ている。人身被害に至らぬ前に野犬の捕獲など対策が必要だ。

 ヤンバルクイナやケナガネズミなど希少生物が咬み殺される被害も発生している。野犬だけでなく野猫による被害も多い。
 野犬や野猫の増加は人が捨てたためだ。県自然保護課によると県内の野犬、野猫の殺処分数は2014年度で4250匹に上り、全国7位と多い。それだけ無責任な飼い主が多いとみられている。
 食べ物を求め群れとなった野犬は狂暴化しかねない。人が咬まれて大けがをし、感染症など疾病にもなりかねない。飼い犬を捨てない基本的なマナーが県民に求められている。
 国頭村によると6月に楚洲、安田周辺で相当な数の野犬の群れの情報が寄せられた。このため県動物愛護管理センターと連携して捕獲器を設置しているが、1匹も捕獲できていないという。環境省とも対策を協議しているという。
 同村では従来、村内各区に「飼い犬や猫を捨てず、餌もやらないように」と文書で呼び掛けている。しかし野犬や野猫の多くは都市部から持ち込まれるため、らちが明かない状況にある。
 県や環境省は地元任せにせず、注意喚起の広報活動に力を入れてもらいたい。
 北部だけの問題ではない。宮古保健所管内は近年の統計で犬による咬傷(こうしょう)被害が他地区より突出して多いという。県動物愛護管理センターによると「2、3匹の野犬の群れは豊見城市など本島各地で見受けられる」という。食べ物を求めて集落近くを行動することが多いというから要注意だ。
 国頭、大宜味、東の3村は近く「やんばる国立公園」に指定される。将来の世界自然遺産登録をも視野に、希少生物の保護は大きな課題だ。
 楚洲周辺はヤンバルクイナの交通事故死が多く、対策の重点地区でもある。県と環境省による天敵マングースの防除事業は、楚洲周辺の根絶を達成したばかりだ。
 野犬や野猫は北部の野生生物の大きな脅威だ。その原因を都会に住む県民がつくり出している。北部へのドライブは路上の生き物に注意して速度を落とし、犬や猫を捨てることがあってはならない。