<社説>名護市長支援訴え IUCNは積極的関与を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 稲嶺進名護市長が国際自然保護連合(IUCN)の第6回世界自然保護会議のワークショップで、辺野古新基地建設阻止への国際社会の支援を訴えた。

 市長は「(新基地建設が)計画されている大浦湾は豊かな自然が残っている。ジュゴン、サンゴ、海草、絶滅危惧種といわれる海洋生物がいる」とも説明した。
 新基地建設問題は優れて環境問題である。世界最大の自然保護組織であるIUCNにはこれまで以上に新基地建設問題に積極的に関与し、影響力を行使することを求めたい。
 IUCNは2000年、日本政府にジュゴン保護などを求めた勧告で、新基地建設によって「辺野古沿岸のサンゴ礁などを破壊、ジュゴンの生存に大きな脅威を与える可能性がある」と警告した。同様の勧告を計4度行い、沖縄の民意の正当性を証明し後押しした。
 一方で、日本政府は新基地建設の方針を変えていない。勧告だけで済ませていては、問題解決は難しい。「勧告が生かされているのかチェックしてほしい」との市長の要請にIUCNは応えるべきだ。
 それに加えてIUCNとして国際社会に日本政府の勧告無視を告発するなど、あらゆる手段を尽くして現状を打開してほしい。日本政府が新基地建設を優先し、環境保全に背を向けている状況を放置してはならない。
 沖縄側も国際社会への発信力を強化する必要がある。市長が参加したポスターセッションでは「基地があるから経済が潤うのではないか」など、沖縄の基地問題の本質が理解されているとは言い難い質問もあった。新基地建設は環境を破壊し、沖縄社会発展の大きな障害となることを国際社会に浸透させることに、さらに注力したい。
 新基地阻止への国際的な支援は着実に広がっている。退役米軍人らでつくる平和団体「ベテランズ・フォー・ピース」は8月の総会で、建設計画の中止などを求める決議案を全会一致で可決した。
 ハワイ州と韓国・済州島は沖縄県と今月、それぞれの環境課題解決に向けた連携を確認し、「グリーンアイランドパートナーシップ」設立に合意している。
 環境問題に国境はない。新基地建設を巡る沖縄の環境問題を、国際社会が注視している。日本政府は環境保全をないがしろにする姿勢を、直ちに改めるべきだ。