<社説>道路整備阻む米軍 これで「良き隣人」なのか


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 米軍基地の存在が県民生活の利便性を阻害している。

 北谷町の県道24号バイパスなど、返還が予定されている米軍基地に関係する県内7カ所の道路整備事業で、米側との協議が進まず工事の進展が滞っている。治水のための基地内河川の整備も進まない。
 米側は公共事業を推進する上で必要な施設の一部返還や共同使用を迅速、着実に進展させるべきだ。基地の「負担軽減」を強調する日本政府は、米側へ強く働き掛ける責任がある。
 県が指摘するように、沖縄は陸上交通の大半を自動車交通に依存し、台風や集中豪雨による浸水被害をたびたび受ける。このため道路網の体系的整備と治水による河川整備は県民生活の利便性の向上と安全のために欠かせない。
 そもそも米軍基地があるため、県民は基地の周囲を遠回りせざるを得ない。道路整備に関して県が求める基地の返還や共同使用は、施設の周辺部のごく一部にすぎない。例えば、宜野湾北中城線は、安谷屋交差点から北中城村役場前までの区間が基地に接している。拡幅工事を計画する県は返還期限前の早期着工を求めるが、米側は2013年の統合計画で示された「24年度またはその後に返還可能」を掲げて応じない姿勢を崩さない。これで「良き隣人」と言えるのか。
 同区間の返還で基地の運用に支障を来すわけではないだろう。計画を前倒しすればいいだけの話だ。県民生活の利便が米側の裁量に左右されるのは納得できない。
 港川道路は08年に一部返還が承認された。県は18年3月に一部供用開始の沖縄西海岸道路と同時供用できるよう着工への協力を求めてきた。米側は基地内郵便局の移設とセットだと主張するが、条件をつけずに返還すべきだ。
 北谷町の県道24号バイパス工事は、日米が昨年9月に締結した環境補足協定のため、立ち入り調査ができない。同協定による立ち入り手続きが確立されていないからだという。
 協定締結の際、菅義偉官房長官や岸田文雄外相は「歴史的な意義を有する」と評価した。安倍晋三首相は「環境補足協定のような事実上の地位協定の改定を行うことができた」と成果を強調した。しかし、現状は補足協定があっても役に立っていない。むしろ事業が遅れる原因になっている。
 日米両政府は県民の利便性向上のため速やかに対応すべきだ。