<社説>県外機動隊経費負担 政治的中立とは程遠い


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 北部訓練場で警備に当たる警視庁や大阪府警などの機動隊に、給油代や高速道路代など現地での経費を沖縄側が負担していたことが分かった。抗議の市民に負傷者が出るなど暴力的な警備をする各地の機動隊は、土足で沖縄に踏み込んだだけでなく、県民の税金である公費まで使用している。市民感情からして納得のいく話ではない。

 沖縄平和市民連絡会が開示請求した公文書で明らかになった。文書は沖縄県警が各都道府県警に宛てたもので、車両の修理経費も沖縄県警が負担するとしている。
 県民と対峙(たいじ)し、批判も多い北部訓練場での警備に対し、公金を支出するのが果たして適切なのか。県警本部長と県公安委員会の各委員は県民に説明する義務がある。
 北部訓練場の警備に当たり、各都道府県警への援助要求は県公安委が出したものだが、起案したのは県警だ。県公安委は、県警の案を追認し、政府のヘリパッド建設強行に加担したといえる。
 県公安委のホームページには次のように書かれている。
 「公安委員会は、警察行政に県民の方々の意見を反映させながら、警察の民主的な運営と政治的な中立性を確保するために設置されており、警察を管理する機関として大きな役割を果たしています」
 住民意見を反映し、政治的中立性を保つのであれば、現在、北部訓練場の周辺で起きている暴力的な警備をやめさせ、応援の機動隊の撤退を県公安委は決定すべきだ。法的根拠すら曖昧な検問や抗議する市民との衝突によって周辺住民の生活にまで悪影響を及ぼしている。県公安委の各委員が現状をどう見ているのか示してもらいたい。
 北部訓練場のヘリパッド建設は、同訓練場の過半の返還という「アメ」を見せ、米軍の機能強化を図ることが目的にある。
 しかもヘリパッドは東村高江の集落を取り囲むように建設される。生活環境の悪化だけでなく、ヘリ墜落の危険が増す高江住民が反対するのは当然である。混乱のそもそもの原因は住民の意思を無視したヘリパッド建設にあるのだ。
 警備体制を見直せば済む問題ではない。豊かな森が残る本島北部は15日に国立公園として正式に指定される。政府が行うべきは北部訓練場の全面返還による自然保護であり、さらなる負担を押し付ける基地機能強化ではない。