<社説>嘉手納騒音激化 外来機飛来に歯止めかけよ


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 日米両政府が唱える「基地負担の軽減」はまやかしだ。騒音軽減を何度も約束してきたが、米軍嘉手納基地の騒音は激化の一途をたどっている。

 県の2015年度の航空機騒音測定によると嘉手納町屋良で、夜間・早朝(午後10時~午前6時)に航空機騒音が月平均175・7回発生し、前年度の116・9回から激増した。
 人が眠る夜間の騒音が実に1・5倍にも増えたのだ。この時間帯に1日平均5回も米軍機の騒音に見舞われたら安眠などできない。
 この夜間・早朝の時間帯は、日米政府間の騒音防止協定で米軍機の飛行が制限されている。実効性のない空約束というほかない。
 調査では嘉手納基地周辺19の測定局中、8局が環境基準を超えた。
 嘉手納町が行った同基地周辺3地点での15年度の調査でも、70デシベル以上の騒音が、前年度を2757回(6・1%)上回る4万7685回に上っている。
 すさまじい実態である。米本国や米軍基地の規制が厳しいイタリアなどであれば、騒音を理由に基地が撤去されるのではないか。
 原因は何か。騒音防止協定の形骸化もあるが、外来機の飛来が増加しているのが大きな要因だ。
 沖縄防衛局の15年度調査では、午前6時~午後6時の昼間に米軍機などの離着陸回数は4万3467回(前年度比1021回増)を数え、外来機が30・3%を占めた。
 今年8月以降でも対北朝鮮の無人偵察機RQ4が初飛来。FA18戦闘機が、2メートル離れた車の警笛に匹敵する108デシベルの爆音をまき散らし、北朝鮮の核実験を調査する大気観測機も飛来した。
 騒音の激しいFA18は飛来が常態化している。暫定配備と称するF22ラプター戦闘機、F16戦闘機の多数の飛来が繰り返されている。
 FA18、F16は米国で墜落、死亡事故を起こしたばかりだ。
 そうした中、騒音の激しさで米国の住民が米空軍を提訴した最新鋭ステルス戦闘機F35の配備も計画されている。
 F15戦闘機の本土への訓練移転が行われているというが、それを上回る外来機の飛来や新たな配備による嘉手納基地の負担強化、周辺住民の生活侵害は明らかだ。
 騒音、事故の危険性を軽減するにはF22、F16の暫定配備、F35配備計画を中止し、無秩序な外来機の飛来を見直すしかない。政府の責任ある対応が問われている。