<社説>所得格差最大 総合的な貧困対策急げ


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 日本は高所得者と低所得者の二極分化が進んでいる。厚生労働省は世帯ごとの所得の格差が2013年に過去最大となったとの調査結果を発表した。

 格差は経済成長率を押し下げる。低所得層の税や社会保障の負担軽減、非正規労働者の賃金底上げ、教育への公的支出増など総合的な貧困対策と財源の確保に取り組む必要がある。
 指標は「ジニ係数」と呼ばれ、0~1の間で1に近いほど格差が大きくなる。税金の支払いや公的年金などの社会保障給付を含まない「当初所得」のジニ係数は、1983年以降上昇が続き、13年は前回(10年)よりも0・0168ポイント高い0・5704となった。
 先進国が加盟する経済協力開発機構(OECD)の12年データによると、日本のジニ係数は加盟国平均(0・32)より高い。平均値との差は税と社会保障による所得の再分配後の方が大きく、裕福な人から貧しい人への所得移転が他国より進んでいないことを示す。
 総務省によると、6月時点の非正規労働者は2016万人。前年同月比で7カ月連続で増え、働く人の37・4%を占める。沖縄の非正規雇用率は44・5%(総務省12年調査)で全国一高い。
 厚労省の資料では、先進国の正社員に対するパート労働者の時給はフランス89・1%、ドイツ79・3%、英国70・8%に対し、日本は56・8%にとどまり格差が大きい。非正規労働は年を重ねても給与の上昇は見込めない。低賃金で貯金もできない。健康保険や厚生年金の未加入も多い。
 安倍晋三首相は8月、組閣後の会見で「非正規という言葉をこの国から一掃する」と述べ、パートなど非正規労働者の待遇改善を明言した。確かに「同一労働同一賃金」や厚生年金への適用範囲の拡大は必要だ。しかし、待遇改善だけでは不十分である。所得格差を是正するためには、非正規労働を固定化させてはならない。
 教育の問題も格差と密接に結び付いている。県の調査によると、子どものころ貧しかった人が親になった現在も貧困に苦しむ割合は4割を超す。貧困の世代間連鎖を断ち切るために、無料塾の全市町村への拡大や、返済不要な給付型奨学金の拡充など教育への支出拡大が求められる。格差社会を改善して、全ての人に希望の持てる未来を約束することは、政治の責任である。