<社説>政活費不正受給 透明性高める制度改革を


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 政務活動費の不正受給で富山市議9人が辞職した。公選法では欠員が定数の6分の1を超えた場合、50日以内に補欠選挙を行うと規定している。富山市議会の定数は40人だ。不正受給による辞職で約4分の1の欠員が生じている。このため11月6日に補選を実施することになった。前代未聞の事態だ。

 富山市議会だけではない。富山県議会や山形県議会でも、不正受給が明らかになり、議員辞職が相次いでいる。再発防止には、政活費の仕組みや手続きを抜本的に見直すしかない。
 政活費は地方議員に調査・研究の経費として議員報酬とは別に支給される。2000年に政務調査費として導入され、使途を拡大した12年の法改正で名称変更した。しかし使い道の不透明さが問題視されてきた。調査・研究目的のはずが、議員の間には「第2の報酬」との認識がまん延していた。
 富山県議会と市議会の不正受給が発覚したのは地元新聞社などの報道によるものだ。富山市議会で議員報酬を月額10万円引き上げる条例改正案が十分な議論のないまま可決された。このため報道機関が議会活動を検証するため、情報公開による資料の開示請求などを重ねて不正を突き止めた。闇の中に埋もれていた事実を掘り起こす調査報道の手本だ。
 富山だけでなく、全国各地の報道機関も地元の議会の検証活動を始めた。こうした中、各地の議会事務局が信じられない対応をしていた。新聞社や市民団体が議員の政活費を情報公開請求すると、各地の議会事務局が議員側に請求があった事実を伝えたり、請求者や団体名を報告したりしていた。富山市議会事務局の職員も、報道機関から請求があったことを当該市議に漏らしていた。
 本来は議会事務局こそが政活費の適正使用をチェックしなければならないはずだ。情報公開をした請求者の確認作業を議員側に伝えていた行為は、議員の不正を黙認し、放置する温床になっていたと批判されても仕方ない。
 政活費の公開方法も議会によってまちまちだ。情報公開で請求し、コピー代金を支払わなければ入手できない議会もあれば、インターネットで領収書も全て公開している議会もある。不正を防止するためには、さらなる情報公開を進め、住民に対する透明性を高める制度改革の取り組みが必要だ。