<社説>学生の経済的困窮 公的支援のさらなる充実を


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 県内の9大学・短大に通う学生のうち2015年度に「経済的事由」で休学していた者が230人、退学者は41人いたことが琉球新報社のアンケートで明らかになった。

 未来の沖縄を担う若者が学費の支払いに困窮し、学問の道を諦めざるを得ない現状を残念に思う。
 貸与型奨学金を利用する者も県内の全学生1万9342人のうち、44・8%に当たる8677人に上る。奨学金と名は付くものの、実態は返還しなければならない借金であり「学生ローン」と言えよう。
 経済的に困窮する学生を救済するには、返す必要のない給付型奨学金をはじめとする公的支援の充実が不可欠だ。県や国は一刻も早く支援態勢を構築すべきだ。
 県教育委員会が創設した「沖縄県県外進学大学生奨学金」は最大30万円の入学支度金と、入学後に月額最大7万円が給付される。ただ対象となる大学は、文部科学省が認定し、世界レベルの研究を実践する東京大などの「スーパーグローバル大学」に限定される。
 沖縄から高度な人材を育成しようという意図は理解するが、もっと門戸を広げてもらいたい。県外だけでなく県内高等教育機関での人材育成に、さらに力を入れる必要がある。
 県内の大学・短大はそれぞれ独自に給付型奨学金に取り組んでいるが、それにも限界がある。学費を工面するために「(学生が)アルバイトを複数掛け持ちしている」(鎌田佐多子沖縄女子短大学長)といった現状を公的支援の充実によって解消したい。
 学生の経済的困窮という課題は沖縄だけにとどまらないだろう。国立国会図書館がまとめた「諸外国における大学の授業料と奨学金」によると、経済協力開発機構(OECD)調査で、日本は「高授業料・低補助」のグループに属し、さらに授業料が有償かつ高額で国の給付型奨学金がないのはOECD加盟国で日本だけという。
 財政状況の厳しさから外国でも無償だった高等教育を有償化する流れにあるが、イギリスでは授業料値上げに併せ、貸与制・給付型奨学金を拡充した。
 文科省は今年に入り、給付型奨学金創設に向けた有識者会議を設置した。早急に結論を出してもらいたい。経済的な理由で進学を諦めれば格差は固定する。若者への支援を手厚くし「貧困の連鎖」を断たねばならない。