<社説>伝統工芸の振興 王府伝来の技法と美生かせ


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 県民が誇りに思い、県外に発信したい沖縄の魅力は何か。美しく豊かな自然、琉球舞踊や三線、空手、琉球王府時代から引き継ぐ伝統工芸品の数々が思い浮かぶ。

 その伝統工芸品の振興に向けた新たな動きが注目されている。工芸品の魅力の情報発信とブランド化の取り組みに期待したい。
 那覇市のNPO法人アートリンクは、琉球漆器など漆工芸のウェブサイト「おきなわ漆Web」を開設した。工芸家の活動やイベント、漆器を用いるライフスタイルを提案し、消費者と生産者をつなぐ商品販売に結び付けようというものだ。
 螺鈿(らでん)や堆錦(ついきん)など独特の技巧を凝らした琉球漆器は中国皇帝に献上され、北京の故宮博物院にも所蔵されている。徳川家康に献上されたとされる国の重要文化財「朱漆花鳥七宝繋密陀絵沈金御供飯(しゅうるしかちょうしっぽうつなぎみつだえちんきんうくはん)」は徳川美術館が所蔵している。
 歴史ある琉球漆器など漆工芸品の再興を「漆Web」の情報発信が担うことを期待したい。
 那覇市内の琉球漆器の老舗「紅房」は、惜しまれつつ2001年に廃業した。家庭にあった漆器がプラスチックやガラス器具に代わったことでの売り上げ減が響いた。
 漆の味わいある伝統美を残しつつ、現代のライフスタイルにも合う商品化が再興の課題となろう。
 三線愛好家は県内から全国に広がりを見せている。しかし県三線製作事業協同組合によると、流通している三線の約75%を安価な海外産三線が占めているという。
 そのため県内の若手職人が担ってきた低価格三線の販売を海外産に奪われ、事業所の経営や職人育成にも影響が出ているという。
 安価な海外産との差別化を図るため「県産三線普及ブランド化委員会」を、同組合が設立した。
 三線は12年に県の伝統工芸品に指定されたが、さらにブランド力を高めるため、18年に「国の伝統的工芸品」指定を目指す目標を掲げる。
 伝統工芸品指定は、日常の用に供され、伝統的な原材料を使用、伝統的技法による製作が基準となる。文献調査で伝統技法を明確にし、コクタンや蛇皮の材料確保による生産体制の確立もしっかり検証したい。
 県は第7次県伝統工芸産業振興計画を推進中だ。芭蕉布や紅型、宮古上布、久米島紬、読谷山花織(ゆんたんざはなうい)、壷屋焼ほかの陶芸などの伝統工芸品の普及振興に力を注いでほしい。