<社説>一括交付金 もっと自由度を高めよ


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 2016年度で制度開始から5年目の中間年を迎えた沖縄振興一括交付金を、全市町村長が評価すると本紙アンケートに回答した。

 理由として「既存の補助事業でできなかった事業ができた」との回答が多い。人工透析施設の整備(伊江村)や、母子家庭に住まいを1年間提供する母子家庭生活支援モデル事業(うるま市)、船賃負担軽減事業(竹富町)などの成果を見るとうなずける。
 しかし、単年度で完結することを前提とした予算であるため、継続的な事業に充てにくい。補助率の低い既存の事業の代わりに一括交付金は使えない。さらに成果指標を国に提出するよう求められている。このため単年度で消化し、成果が表れやすいスポーツや観光振興に関する事業が多くなる傾向がある。実は自由度が限定され、使いづらい面もある。
 一括交付金とは、国によって使い道が定められている「ひも付き補助金」の高率補助制度の代わりに、自治体が一定程度使途を自由に決められる地方交付金だ。さらに自由度を高め、単年度主義を改めるべきだ。
 そもそも沖縄振興一括交付金は、民主党政権時代に設計された。民主党のマニフェストと沖縄ビジョンで国庫補助負担金の廃止とその一括交付金化、国の出先機関の廃止が明記された。予算を通じた国の関与をゼロにするか、最小限に抑え込んで地域の裁量を最大化することで、沖縄を全国の地域主権改革のモデルケースにしようとした。しかし地域主権改革が後退する中で換骨奪胎された。
 結局、沖縄振興一括交付金は従来の高率補助の公共事業の一括交付金と、ソフト事業の一括交付金に分けられた。公共事業の一括交付金は従来の各省庁の補助要綱がそのまま適用され、国の統制を受ける。ソフト事業の一括交付金は補助要綱を内閣府沖縄担当部局が策定したため、沖縄の裁量が弱まった。
 沖縄の未来を担う子どもの貧困対策は単年度の予算措置では難しい。長期的視点に立って、成果が上がるまでに時間のかかる沖縄の自然環境保全や、しまくとぅばの継承など文化事業、教育にも積極的に予算がつけられるよう、制度を改めるべきだ。
 もちろん、一括交付金をうまく活用する各市町村の手腕も問われている。