<社説>全国学力テスト 考える力育てる授業を


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 全国水準を目指してきた県の学力向上の取り組みが、一定の成果を挙げている。

 全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で沖縄の小学校は初めて国語、算数の各A・B問題の平均正答率が全国平均を超えた。算数Aは全国4位だった。中学校も都道府県別では下位だったものの全国平均との差を縮めている。
 ただし、学力テストはあくまでも学力を測る指標の一つであり、順位偏重に陥ってはならない。今後とも授業改善に力を入れ、児童・生徒に学ぶ楽しさを実感させ、考える力を育てる授業を実践してもらいたい。就寝時間や家庭学習の取り組みなど家庭の取り組みも欠かせない。
 県内小学校の平均正答率は前年度と比べると、国語Aで4・1ポイント、算数Aで3・0ポイント、算数Bで3・0ポイント上がった。県内中学校の平均正答率を前年度と比べると、国語Aで1・3ポイント、国語Bで1・8ポイント、数学Bで3ポイント上昇した。
 県教育庁は「学力向上ウェブシステム」を構築し、県独自の実力テストを年2回実施し、学校を訪問し助言した。応用力を問うB問題で正答率が向上したことを「授業改善の成果」と強調する。
 だが、数値上昇への「無言の圧力」が現場に広がっている。ある学校は数値を上げるため、ひたすら過去問題を解かせるので、本来の学習が実施できない。成績下位の児童はやる気を失い、上位の児童は飽きてしまうという。テスト対策のため、楽しみにしていた行事が縮小される。ウェブシステムも評価が分かれる。誰のための「学力」かという疑問の声が出るのは当然だ。
 教員は忙しい。授業に集中できる環境を整えないと、真の学力は付かないだろう。子どもたちが自ら課題を設定し、その解決に向けて話し合い、まとめる学習も積極的に取り入れたい。
 文科省の調査によると、県内の小中学生は朝食を毎日食べる割合が全国平均より少なく、就寝時間も遅い。規則正しい生活も学力と関連する。学校任せにするのではなく、家庭力が問われている。
 一方、文科省は学力テストの結果と貧困家庭の関連性を踏まえて、全国千校に教職員を追加派遣する。それだけではなく、低所得層の税や社会保障の負担軽減、非正規労働者の賃金底上げなど総合的な貧困対策が必要だ。