<社説>ブラックバイト 若者潰す社会に未来ない


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄労働局が県内9大学と48校で組織する県専修学校各種学校協会の学生を対象に実施した調査によると、アルバイト経験のある学生2271人のうち、40・5%の920人が不当な扱いを経験していた。4人に1人、25・5%が「学業に支障を来した」と回答し、留年や単位を落とした学生も14人いた。極めて深刻な事態だ。

 不当な扱いで最も多いのは「採用時に約束した以上の長時間労働をさせられた」(44・6%)で「1日に労働時間が6時間を超えても休憩時間がなかった」(35・1%)、「時間外や休日、深夜労働の割増賃金が支払われなかった」(17・0%)と続く。さらに法定労働時間を超える「(1日)8時間以上」との回答も6・5%に上っており、学生たちは法令違反の疑いがある労働環境にさらされている。
 違法や違法に近い劣悪な労働条件で酷使されるアルバイトは「ブラックバイト」と呼ばれている。県内の学生もブラックバイトの被害を受けている実態が調査で浮かんだ。なぜ法令違反がまかり通るのか。
 労働局は「学生の法令に関する認知度が低く、ブラックバイトと認識せずに働いている可能性もある」と指摘する。労働条件の認知度を問う設問では12項目中、半数以上の学生が知っていたのは2項目だけだった。
 雇用主側が学生の認識不足につけ込み、不当な労働を強いていたとみるほかない。
 ブラックバイトの背景には、正社員を極力減らしてアルバイトを使い、低コストを図ろうとする事業者側の体質があるといわれる。
 学生側にも事情がある。学費や生活費のために「多少過酷であってもアルバイトをせざるを得ない」と調査で答えている。極めて不健全な構造になっている。
 その結果、学生の中には入院したり、留年したり、単位を落としたりしており、体調不良などによって学業そのものに影響が出ている。大学や専門学校で学ぶために始めたアルバイト自体が、学べなくなる原因となっているのだ。
 野入直美琉球大准教授は「若者を使い潰(つぶ)す社会は、未来をどぶに捨てて、今だけをしのぐ社会だ」と指摘する。本質を突いている。
 労働局、大学、雇用主らが連携し、学生の労働環境を改善する仕組みづくりを急ぐ必要がある。