<社説>空手形で世界V3 五輪種目沖縄誘致の弾みに


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 空手が2020年東京五輪の追加種目に決まってから、日本国内で初の世界大会となる「空手1プレミアリーグ沖縄大会」が催された。空手の世界最高水準の大会が発祥の地・沖縄で催され、県勢が形の部で大活躍した意義は大きい。

 男子個人形で喜友名諒選手(劉衛流龍鳳会)が決勝の県勢対決を制して大会3連覇を果たし、上村拓也選手(同)が準優勝した。2選手に金城新選手(同)を加えた団体形でも3連覇を果たした。
 東京五輪出場が有望視され、メダル候補に目される3選手の奮闘は、県内の青少年の夢を広げる。最高峰の演武を大いにたたえたい。
 極限まで集中力を高め、バネ仕掛けのような突きや蹴りを瞬時に繰り出す喜友名選手の形の完成度は群を抜いていた。
 小学生の頃からのライバルだった3選手の団体は華美な動きを追い求めはしない。危険を伴う急所への突きや蹴りの寸止めなど、実践形式の技を掛け合う絶妙の呼吸に鍛錬のすごみが凝縮された。
 3選手ともに演武の完成度に満足していないことが頼もしい。25日からオーストリアで開かれる世界選手権制覇を目指し、技をさらに高めてほしい。
 東京五輪の空手形の沖縄開催を目指す動きが加速している。行政、経済界、空手界などを網羅した「誘致実行委員会」(21団体、会長・翁長雄志知事)が、12月の競技会場決定をにらみ、政府など関係機関に働き掛けを強めている。
 有力な国際大会での県勢の躍動は誘致運動にも弾みをつけた。五輪出場のトップ選手が沖縄で技を競えば、発祥の地の県民に誇りと夢をもたらすことは間違いない。
 25日の「空手の日」や、それを記念して那覇市の国際通りで3千人が集団演武のギネス新記録を狙う「演武祭」など、関連行事を通し沖縄誘致の機運を高めたい。
 世界空手連盟には192の国・地域が加盟し、愛好者は6千万人とも1億人とも言われる。なぜ、東洋の小さな島の武道がこれほどの広がりを持ったのか。「空手に先手なし」の理念がある。先制攻撃ではなく、身を守る「平和の武術」であり、相手を傷つけない精神性を宿す。
 世界で戦争と紛争のニュースが駆け巡る中、「非武・非戦」の思想を体現する空手の五輪開催地は沖縄がふさわしい。世界に空手が普及した意義をかみしめたい。