<社説>県の上告理由書 最高裁は沖縄に自治認めよ


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 沖縄の地から地方自治、民主主義とは何かを改めて問うものだ。最高裁は民主主義国家として当然の判断を下してほしい。

 名護市辺野古の新基地建設を巡る違法確認訴訟で県は3日、最高裁へ向け、憲法違反を問う上告理由書と法解釈などを問う上告受理申請書を提出した。
 なぜ辺野古の海を埋め立てて米軍基地を造ることが民主主義の問題になるのか。
 国家権力を民意に基づくものにするのが民主主義だ。しかし多数決は時に多数者の横暴を招く。それを防ぎ、少数者の意見を尊重するために民主主義国家は基本的人権を保障する。
 ところが、ある特定の地域に住み続ける人たちは全国的な多数者になることはない。いわば固定的な少数者だ。少数者の権利を全国の多数者が奪うことがないよう、権利を認めるのが地方自治なのである。だからこそ日本国憲法は立憲民主主義の一環として憲法92条「地方自治の本旨」で住民に自治権があることを認めている。
 この国の民主主義を考える上で特に重要なことは、上告理由書で述べた憲法違反を指摘する部分だ。
 福岡高裁那覇支部の判決は辺野古の海を埋め立てて新たな米軍基地を造ることに、「既存の米軍使用水域を埋め立てて設置されるものであり、規模も普天間飛行場の半分以下だ」とし、「辺野古新基地建設に伴う自治権の制限は日米安全保障条約および日米地位協定に基づくもの」として「地方自治の本旨」の自治権侵害に当たらないとした。
 これに対して県は、米軍絡みの事件事故などの基地負担、自然環境への不利益を挙げて反証する。戦後71年続く米軍基地の過重負担の結果、いま新基地建設に対する県民の民意が示されているとする。民意とは2014年の沖縄県知事選以降、辺野古新基地が争点になった国政選挙などの各種選挙、議会決議、県民大会、世論調査などだ。
 そして「面積が小さくなるから自治権侵害に当たらないなどと言う論理は、沖縄における米軍基地による被害や過重負担の実態を完全に無視した、屁理屈(へりくつ)」と指摘した。
 地方自治はこの国が民主主義国家と標榜(ひょうぼう)するならば、侵してはならない権利だ。最高裁は法の番人として、憲法に保障された自治権を沖縄県民にも認めるべきだ。