<社説>ハリアー飛行再開 責任は危険放置する政府に


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 無責任極まりない。米軍は本島東沖で墜落事故を起こしたAV8Bハリアー戦闘攻撃機の事故原因が不明のまま、7日から同型機の飛行訓練を再開すると発表した。県民の安全をないがしろにする暴挙だ。飛行訓練を再開する米軍と、これを容認する姿勢の日本政府に強く抗議し、原因究明までの飛行中止を要求する。

 米軍は「初期調査で機体の構造、整備上の欠陥は特定できなかった」と述べた。従来通りの「整備上の安全」を飛行再開の理由に挙げ、事故原因は不明だ。到底、納得できない。
 県内の米軍機墜落事故は復帰後、47件に上る。年1回以上の異常な頻度であり、県民は日常的に米軍機墜落の危険にさらされている。
 その上、墜落事故が発生しても事故原因が究明されぬままの飛行再開が繰り返されている。これでは県民の安全は確保されない。
 その責任の過半は日本政府にある。2013年8月の米軍ヘリ墜落事故で、米軍が「同型ヘリの整備を確認した」として飛行再開を発表した当日、当時の武田博史沖縄防衛局長が「安全性が確認され、同機の役割の重要性を勘案し飛行再開は理解できる」と容認する文書を米軍当局に届けていた。
 この対応は公表されず、民間調査団体が情報公開請求で文書を入手し最近、明らかにしたものだ。
 機体の整備は飛行前に不可欠な作業だ。整備点検を行いながら墜落事故は起きた。事故原因を究明しなければ再発防止は保証されない。無責任な米軍の飛行再開を防衛局長が容認し、お墨付きを与えたのである。
 復帰後47件の墜落事故の続発は、米軍と日本政府の無責任さの積み重ねと言うほかない。
 そのうち6件はハリアー機だ。米本国でも今年5月に1機、14年にも2機が墜落している。同機は垂直離着陸機で、垂直離着陸と水平飛行の転換時に墜落事故が多いと専門家は指摘する。
 これほど墜落事故が相次げば、機体構造上の問題、垂直離着陸の飛行特性を疑わざるを得ない。
 日米地位協定が米軍の無責任な基地の自由使用を認めていることも、事故が絶えない要因だ。
 事故の徹底検証、機体構造や飛行操作にどのような問題があったのか、事故原因の詳細を明らかにするのは当然だ。ハリアー機の飛行再開は容認できない。